2025年のフェラーリの未来



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2021年にフェラーリのCEOとなったBenedetto Vigna氏のインタビューを読みました。
1976年の年間生産台数は1426台だった企業は2022年には13221台と巨大企業となりました。
南イタリア出身のVigna 氏は大学では物理学を専攻、半導体メーカーからやってきた優秀な人物。
ferrari ならではのEV化を推進していく意気込みを語っています。
今後のEV化はどの自動車メーカーも避けられないでしょう。
環境問題にも配慮し、サステナビリティも企業として重点をおいているとも。
まるでトヨタや日産のCEOのインタビューのような印象をうけます。

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電気自動の草分けは何といってもテスラ。これほどまでに販売台数をのばすとは当時は思いもよりませんでした。
今ではどこに行っても見るようになりました。
決して美しいとは言えないデザインですがクルマを移動の手段としてのみ考えたならいいクルマだと思います。
実際私のお客様で所有している方がおり、あの自動運転の素晴らしさは予想以上とのこと。
しかし趣味としてもつなら私はテスラを選ぶことはないでしょう。
EV化はエンジンだけにはとどまりません。タッチセンサーによるエンジンの始動やドアの開閉、新しいフェラーリのスイッチ類はすべてタッチ方式です。その機能を使いこなすには分厚いマニュアルを熟読しなければなりません。
i phone と同じで私にはすべての機能は到底使いこなせないでしょう。296のシートヒーターさえもそこにたどり着くまでスワイプしてオン、オフするのに手間取ったほどです。
さらにモダンフェラーリはどのモデルも充電プラグを差し込んでおかなければ10日ほどでバッテリーは上がり、エンジンはかからなくなります。
今やすべてのフェラーリはパドルシフトとなり、あの伝統的なシフトゲージは今や過去のものとなりました。
今後ますます電動化がすすみ、他社のようにメーターパネルはi pad のように巨大になっていくのでしょう。

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レースに実際に参加し、そしてレースをするために会社を興したエンツォフェラーリの時代のクルマは美しく、彼のレーシングスピリットが溢れています。物理学者がつくっていく未来のフェラーリとは違うベクトルをもっていました。
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あのステアリングを切った時にタイヤのグリップを感じながらまがるコーナリング、5速全開で抜けるハイスピードコーナーでテールがヌルヌルすべるあの感覚、サーキットでしか経験できないような体験をしてきたエンツォと今の社長のつくるクルマとは当然異なってきます。フェラーリは新しくなっても感動をあたえるクルマであることは今も昔も変わらないでしょう。

Benedetto 氏はこう言っています。
フェラーリから降りた人は愉快になっているか、汗だくになっているかのどちらかです。フェラーリの操縦にはある種の緊張やストレスが伴いますからね。落ち着いて運転すれば、快楽がそれに優るので、運転し終わった後には笑顔になれるでしょう。

すくなくとも今のフェラーリを公道で運転する限り、汗だくになることはないはずです。296、ローマ、ドディチチリンドリ、どれも免許とりたての女性でも運転することはできます。しかし80年代以前のF40や288、308に代表されるクラシックフェラーリは初めて運転する時はかなりの緊張感が伴います。
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馴れないうちはミスシフトをしないように区切られたシフトゲージを見ながらシフトせざるをえなかったり、
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極端にオフセットしたアクセルとブレーキのペダルの位置を確認したりとそれこそ慣れるまでは運転し終わった後はぐったりします。今から37年前に初めて運転した時のことを思い出します。
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しかしゲージに吸い込まれるようにシフトアップができるようになり、ヒールアンドトウでシフトダウンができるようになると運転すること自体が楽しくなってくるのです。アクセルを全開にできるようになればあのキーンという金属音のようなサウンドと独特なエキゾーストノートの包まれ、ドライバーはフェラーリを運転しているという快楽にひたれるのです。フェラーリは憧れのクルマ。落ち着いて運転することなどできるはずがないのです。

Venedetto 氏が作っていく新しいフェラーリは違った意味で魅力的なクルマになることは間違いないでしょう。それこそがフェラーリの生き残っていく道なのかもしれません。

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しかし私は伝統的なあのシフトゲートのある、カロッツェリアの作った美しいクラシックフェラーリが好きなのです。


この魅力を今年も一人でも多くの方にお伝えしていきたいと思います。

2025年賀正



  # by cavallino-cars | 2025-01-08 14:08 | Comments(0)

納車前の点検整備

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今年の春にイタリアのバレーゼから譲り受けた1オーナーのDino208gt4のメカニカルの整備が先月終了しました。
今回はヘッドカバーガスケット、デスビガスケット、オイルパン、ミッションオイルパンガスケット、プラグ、プラグコード、ポイント、タイヤ、クラッチケーブル、チェンジシャフトシール、クラッチ、タイミングベルト、テンショナーベアリング、ALTベルト、ACベルト、ステアリングギヤボックス、前後アームブッシュ、スタビブッシュ、ドライブシャフトブーツ、エンジンオイル、ミッションオイル、それに各オイルシールなどを交換。タペットシム調整、リヤクランクシール、フロントクランクシール、
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前後ショック、フロントハブベアリング、ハブベアリングキャップ、ラジエターホース、バッテリー、キルスイッチ取付、カムシール、マフラーバンド、エンジントルクアームブッシュ2個交換、前後キャリパーオーバーホール、ブレーキパッド交換。ブレ―キホース、デフサイドシール交換、ウォーターポンプ脱着、パッキン交換、サーモスタット交換、エアコンテンショナーベアリング交換、フロントラジエター温度センサー、オイルフィルター交換、スピードメーターセンサー交換、エアクリーナーエレメント交換、フュエルフィルター交換、リザーブタンクキャップ交換、カムカバーメッキナット交換、フユエルバランスチューブ交換、左ガソリンタンク脱着、ヒーターホース交換、給油口から燃料タンクまでのホース交換、ドアランプスイッチ脱着清掃、左だけ不灯のためランプユニット交換、ブレーキローター研磨。
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ステアリングギヤボックスラバーマウント交換、エンジンフードストラット動き悪いため給油、左前のヒーターファン不動のため、ヒーターファン交換、フューズボックスファンが焼けて熱で溶けていたため交換、エンジンルーム内ランプバルブ切れのため交換、同ライトカバー清掃など、多岐にわたりました。
すべての作業が終了したのは入庫から半年ほど。今月11日に足回りを交換したため前後のアライメントを再調整しました。修正前の状況は下のとうりでキャンバーもトーもかなりバラバラでした。
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これをすべてメーカーの規定値に合わせました。
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軽くトップエンドまで回るこの2リッターのエンジンはその性能は言うまでもなく、あのキーンというサウンドは当時のフェラーリならではの美しい音色を奏でます。
1台仕上げるのに1年近くかかります。日本のお客さまにこれから私がお届けできるクラシックフェラーリは年間数台ほどになることでしょう。フェラーリと呼べるフェラーリだけをという理念ではじめた私の会社。素晴らしいクルマを来年もお届けいたします。
この1オーナーのgt4はすでに売約済みで、すでに代金もお振込みいただいています。
残すは塗装の補修のみ。来年にはマラネロを出てきた時のような美しい姿を取り戻してこのクルマの2オーナーめとなる方のもとにお届けいたします。

  # by cavallino-cars | 2024-12-23 14:35 | Comments(1)

ブレーキホース

クラシックカーは購入してからのトラブルはすべて自己責任です。
もしこれから購入されることを検討されている方は、販売店から詳しく国内や海外での整備状況を説明していただくことが重要です。
もし特に整備をしていないクルマや海外から個人で輸入した場合などは整備に少なくとも200万円以上を見ておくべきでしょう。
ここ数年で弊社が輸入した車は納車前にかなりの費用をかけて整備してからお客様のもとへお届けしています。
オイル漏れはもちろん、点火時期の調整、プラグの交換、傷んだブッシュ類の交換、プラグコードの点検、デスビキャップにヒビが入っていないか、サプレッサーにヒビやかけがないか、ブレーキの点検、ドライブシャフトブーツの点検など、その整備項目は数えきれないほどで、クルマによっては数か月を要します。
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これは現地でのエンジンの写真。
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そしてこちらは日本に到着して整備中の写真。デスビもきれいになっているのがわかりますか?今回はプラグコードも新品に交換しました。
今日はそのうちの一つのブレーキホースについてお話します。
現地で購入する前に確認することはギヤが問題なく入るか、シフトダウンもきちんとできるか、フルブレーキングをした時にまっすぐ止まるか、エンジンから異音がしないか、その他大きな事故を起こしていないかなどの下回りの確認など。しかし実際に細かく点検するのは日本に到着してからとなります。
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その中でもブレーキは重要な点検項目です。
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こちらは1976年当時の未使用の208gt4用のATE社のブレーキホース。ホースには製造年月がプリントされています。
DOT C 6/78 は78年6月生産。さらに新車時のホースには製造年が打刻されたプラスティックのリングがついています。
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こちらは同じくgt4用の未使用の82年8月生産のホース。
一般にブレーキホースの寿命は8年ほどといわれています。工場によっては表面がひび割れていたり、硬化しているものは交換しますが、旧車の場合走行距離が短いこともあり、ほとんどのクルマは交換されていません。クルマをリフトした時にブレーキホースの汚れを拭いていただくと簡単に確認できますので、機会がありましたら見てみて下さい。
きちんとブレーキが効いていても、さすがに48年前のホースで劣化しているのは間違いありません。
表面にヒビ割れがなく、カシメからオイル漏れがなくとも1976年製のブレーキホースは交換した方がよいでしょう。






  # by cavallino-cars | 2024-12-23 13:47 | Comments(0)

オーバーヒート

先週オーバーヒートで308gt4がキャリアで運ばれてきました。
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最初は電動ファンの故障か、サーモスタットの不良かと思いましが、
原因はエンジンからラジエターにつながるウォーターパイプを押さえるバンドの亀裂によるものでした。
見た目では交換されているように見えてわかりずらいところでした。
目視ではどこからもれていたかがわからないため圧をかけてテストしてみた結果、ポタポタクランプでとめているホースから漏れるのが発覚してここから漏れているのがわかりました。ブラスのネジで閉まるはずのバンドがネジ部分がバカになっており、ある程度までは閉まるのですが閉まりきれずに漏れたもの。
圧力がかかった時にすこしずつ漏れていたので、ガレージの床にはたれていなかったのでしょう。
オーナーの方も気が付かなかったのだと思います。
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ついでに劣化したリザーブタンクのキャップも交換しました。
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このキャップの適正圧は0.9バール。
市販されているものには1.2バールのものもありますので注意してください。
すこしずつ漏れて水の量が減り、ヒートしたのだと思います。冷えている時にたまにエンジンルームのタンクを開けて水が減っていないか確認することをお勧めします。適切な水の量はキャップから5㎝ほどの位置です。

  # by cavallino-cars | 2024-12-09 10:17 | Comments(0)

すり減ったカムシャフト

燃焼室のバルブはカムシャフトのこの山の部分がバルブを下に押し込みガソリンを燃焼室に送り込みます。
今回オーバーホールしたエンジンはカムシャフトの山が本来ある高さから、かなり削りとられ隙間があき、シムをたたき、エンジンをかけるとアイドリング中にタンタンとたたくような音がしていました。
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こちらが本来のカムシャフトの山の高さ。
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そしてこちらがバルブを押し込むシム。中央が削れすり鉢状になっています。
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本来ここにはオイルが入りシムの面はフラットになっているのが正常です。
原因はオイルポンプのギヤの摩耗により、本来オイルフィルターにまでオイルを上げる圧力が低下したことにより、カムとシムの間に十分なオイルがいかなかったためにカムの山とシムのセンター部分がすり減ってしまったものと思われます。
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上の写真の右がオイルポンプ。左がフタです。中には2つのギアが入っていて、それがかみ合うことによりオイルが上に排出される仕組みです。
ポンプというと回転するフィンのようなものでオイルを送り出すイメージがありますが、エンジンの場合はこのギアによってオイルが循環されます。ギヤの隙間が大きくなるとそれだけ圧がさがります。今回は右下のシルバーのギヤが摩耗していたので新しいものに交換しました。その他、摩耗していたインレットカムシャフト(ガソリンが噴出する側)、バルブ、バルブガイド、バルブガイド、バルブガイド、クランクシャフトのメタル、コンロッドのメタルに各オイルシールを交換しました。
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もちろんバルブのすり合わせやピストンの清掃、面研なども実施。
マニホールドにも穴があいていたのでステンレスの新しいものに交換。マフラーも新品に交換しました。
エンジンはくらべものにならないほど軽くまわるようになり、その音も静かになりました。
新しく組みなおしたエンジンの印象をオーナーにお聞きしたところ、あまりにもスムーズであっという間にストレスなく回転があがるとのこと。190キロの慣らしを終え、あと10キロ走行後に4000回転までまわしてみるとのこと。
今週末にあと100キロ走行して5000rpmまで回してみたいとのことでした。
今回の固体は1977年モデル。マラネロをでてから47年が経過しています。
固体差はありますがタペットの音が大きくなり始めたら金額はかかりますが、エンジンオーバーホールをお勧めします。

  # by cavallino-cars | 2024-12-07 15:14 | Comments(0)

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