東京オリンピック招致より大切なこと。
骨折したのは明け方、僕が連絡がとれないので心配で駆けつけ
救急車を呼んだのが午後8時をすぎていた。
何でもっと早く電話してこなかったのかと聞いたら、時計をみたら朝の4時半で
起こしたら可愛そうだからと小さな声で言った。
なにも口にしていない母の口びるは乾き切り、かさかさだった。
顔もぶつけたのだろう、右の唇の上も腫れていた。
救急のレントゲン検査のあと担当医から大腿骨が折れていると言われた。
健康な人は杖が必要になり、杖を使っている人は車椅子に、
車椅子の人は寝たきりになると説明をうける。
既往症がある人や肺炎などを併発した場合は余命は1年とも言われた。
突然そんなことを聞かされて、
一瞬さまざまなことがよぎった。
自宅の改装、介護、仕事。
その日は母の病室に付き添った。
付き添い用のベッドもあったが痛がる母のベッドの下に毛布を引いて寝た。
人には必ず年をとり、寿命があるのはわかっているが、
元気なうちはみんな自分の親や兄弟に
そんな日が突然くるとは考えない。
実家で倒れている母親を見て、いろんな思い出がよみがえる。
不覚にも涙が出そうになった。
人の一生なんて自然の営みからくらべれば、
ほんの一瞬の出来事にすぎない。
そんなわずかな時間に笑い、泣き、苦しみ、憎しみ、感激したり、愛しあうのだ。
いつかは必ず老いはくるし、誰もが確実に最後の時も来る。
悲しいことなのであえてみんな口にしない。
今、母は懸命にリハビリ中だ。
元どおりとはいかなくとも、早く元気になって退院してほしい。
母が帰宅するまであと1ケ月。
風呂の改装、手すりの取り付け、数百万円の予想外の出費。
もし同じことが子供のいない老夫婦におきたら、一人暮らしのお年寄りに
起きたらどうなるのだろう。
区から補助される改装費は総額の6分の1にもみたない。
しかも誰もそんな補助があることを助言してはくれない。
当然だが、改装の後で申請しても補助金はでない。
なにより介護をする人がいない人は悲惨だ。
石原都知事は税金を170億円も使ってもなお東京にオリンピックと騒いでいるが、
果たして都民の何パーセントがオリンピックを招致したいのだろう。
僕のまわりでオリンピックをやって欲しいと言ってる人は一人もいない。
もっとケガをした人や介護が必要な本当に困っている人に
その金額を使っていただきたい。
私の父は脳梗塞で12年前に他界したが、自宅で過ごした2年半の
母の介護生活は本当に大変だった。
これは実際に経験した人でなければ決してわからない。
by cavallino-cars | 2009-11-21 16:18 | Comments(2)