F40のガソリンタンク交換

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今や数億円ともいわれているF40。20年ほど前には3500万円ほどで弊社でも4台ほど販売したことがあります。
F40は普通のアルミ製のガソリンタンクではなく、レースでクラッシュしてもガソリンが漏れずらいラバータンクを使用。さらに燃料の油面が横Gで揺れないようにタンク内にはスポンジが入っています。
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メーカーでは10年毎の交換をすすめていますが、タンクが当時でも1つ250万円、左右で500万円ほどしたため、多くのオーナーは交換していませんでした。3500万のクルマに工賃こみで600万円だすのは少し考えてしまうのも理解できます。
交換しないとタンク内のスポンジが劣化して砂状になり、まずはフュエルフィルターがつまり、エンジン不調の原因や、最悪の場合は出火するリスクもありますが、目に見えて調子が悪くなることもなかったため交換しないオーナーがたくさんいました。
弊社が販売した40も、エンジンは快調そのものだったので交換せずにいました。しかしさすがリスクが大きいと判断し、オーナーに相談して2年前に交換。当初250万円だったタンクは2年前には350万円になり、左右で700万円に高騰。今では円安の影響もあり片側500万円ほどになります。左右で1000万円。しかも入手が難しい状況です。
まずはタイヤをはずし、
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ブレーキローター、キャリパー、アーム類もはずします。
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はずしたアーム類はパーツクリーナ―で汚れを落とします。
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塗装をしなおしたかのようにきれいになります。アームには出荷当時にかかれただろう手書きの数字があるため、それが消えないように丁寧にクリーニングをします。
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バンドで固定されているタンクをとりだします。
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これが新しいタンク。
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Merin社製のものでFIAの承認済みのタンクです。2030年以降は有効でないと書かれています。
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これがオリジナルのタンク。製造年月は90年12月。このクルマは91年モデルですので1度も交換されていないことがわかります。Secur社製のもの。FIA公認のスタンプはありませんがピレリ社がデザインしたと記載されています。
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右のラバーの新しいタンク内に新しいスポンジを入れから、左のボックスにいれてクルマに取り付けます。
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取り付ける前に汚れたフレームもクリーニングし、サッとスプレーしてきれいにします。
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10年後に交換するまで見えないところですが、せっかく外したのできれいにすることにしました。錆も防げます。
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ちなみにこれが古いタンクの給油口から見たタンク内のスポンジ。変色しているのがわかります。もともとは下の写真のような黄色でした。
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こちらが交換後のもの。古いタンク内には茶色く変色したスポンジが劣化して砂のようになってタンクの底に溜まっていました。早めに交換することをお勧めします。
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これはエアフィルターのカバー。上は清掃前。下は軽く洗剤できれいに洗った後。
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フユエルフィルターも新品に交換します。F40 は308に比べ3倍ほど大きなものが2つ付きます。
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タンクからのフュエルラインの繋ぎメには給油後にガソリンが漏れていないかを確認するために取り付ける前に白いスプレーをかけます。
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オルタネーターの下にあるのはフュエルポンプ。ここにもスプレーをかけて、燃料漏れがないかを確認します。
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最後にCOを測定します。
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1.8にして終了。
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最後にテストドライブをして作業終了。
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このクルマは何度乗ってもわくわくします。
今の価格を考えると以前のようにアクセルを全開にするのは躊躇してしまいます。
実に良い時代に私はこのクルマを運転することができて幸運でした。
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個人的には89年の初期モデルのスライド式のウインドウのものが一番。軽さを追求した40ならではで左右のウインドウ、リヤクォーターウインドウ、エンジンルームと室内を区切るウインドウもすべてプレキシ製のものでした。ちなみにディーラー車は安全基準をクリアするために左右のクォーターウインドウとリアはガラス製に交換して納車されました。納車時にはオリジナルのプレキシガラスもクルマと一緒にわたされたはずです。
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ドアの内張もこのようになく、ドアは空洞の中にあるワイヤーで開けます。ドアパネルも軽量化のために穴があけられていました。
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中期以降になると左右のウインドウは巻き上げ式になりますが、ドアの開閉はワイヤー式のままです。
パワーウインドウはモーターの重さを考え、装備されていません。軽量化を追求したこのクルマの素性を感じます。
後期モデルの触媒付きの40は初期モデルに比べて圧倒的に遅いですが、ウエストゲートバルブを初期のものに交換するだけで本来の加速を楽しめるようになります。何台も乗ってきたからこそわかることです。特に触媒のついたモデルは熱でナンバー灯が溶けてしまいます。
アメリカでは最終モデルがもっとも価値があると思われていて、価格も初期モデルよりも高額ですが、理解できません。
私なら初期モデルのスライド式ウインドウのものを迷わず選びます。日本でも最終モデルがもっともよいものと考えている方が多いですが、乗り比べればその間違いに気が付くはずです。
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夏場にガソリンが9割ほど入った状態でキャップを開けるとガソリンが噴き出ることもあるので注意が必要でした。

現行モデルの812の800馬力にくらべればわずか450馬力しかない40ですが、まるでレーシングカーを運転しているようなソリッドな感覚にあのターボが効いた時の炸裂するような加速感、この運転している時だけに得られるエモーショナルな気持ちは唯一のものです。
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今や手が届かない価格になってしまいましたが、純粋に運転する楽しさだけを追求した究極の1台です。


  by cavallino-cars | 2024-04-30 20:49 | Comments(0)

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