黒の1977y Ferrari 308GTBがアドリア海のそばにあるペーサロにて売りにだされていた。これほどのコンディションのGTBを探すのはまず難しいとのオーナーの言葉を信じて何枚かの写真とビデオを事前に送っていただき、ローマに住む従妹に見に行ってもらった。
このGTBは77年に企業の社長のガレージに納車され、その後彼が亡くなるまで40年間生涯をともに過ごして来た1台。
2年前にはタイミングベルトの交換も実施している。
オプションはフロントのビッグスポイラーにエアコン。
インテリアはすべてオリジナルだ。
マフラーもシングルパイプが装着されている。
走行距離はわずか32400㎞。
テールライトも4月にみたデンマークのファイバーのようなクラックもない。
塗装はヘッドライトポットの左右の部分も艶があり、塗装の状態もいい。
メーターナセルもステッチがきちっと正規の位置におさまっており、熱で縮んだり、変形していないことがわかります。
フロントについくウインカーレンズもクラックが入っているものが多い中、ご覧のような状態なのもいい。
バンパーも飛び石や傷もない。
なんといってもインテリアのきれいさに目を奪われます。
ドアノブの下につくコの字型の革製のカバーやパワーウインドウが故障した場合のエマージェンシー用の工具を差し込む穴のカバーもついています。
スピーカーをとめるネジも当時の小さな目立たないものがついているものいい。
これはリヤのクォーターウインドウのフレーム。
そしてこちらはフロントウインドウのフレームです。
雨ざらしのものだとしみだらけになってしまいますが保管状況がよいとこのように艶やかな状態をキープします。
このように走行距離の少ないクルマは実際に動かすと調子が悪いものが多いのですがエンジンは快音を響かせ、すこぶる軽快に回るのが従妹がビデオを送ってくれたおかででわかりました。
スピードメーターやタコメーターはもちろん距離計も動くのも確認済み。
時計だけは残念ながら動いていませんでした。時計なので走行上は問題ありませんが、やはり動くにこしたことはありません。日本でオーバーホールすれば再び時を刻み始めるのではと思います。少しずつ治していくのもクラシックの楽しみでもあります。ちなみに私の308の時計はいまだにとまったままです。
ホィールはカンパニョーロ製。
タイヤはおそらく新車当時の1976年4月製造のものか86年か96年に一度交換されたもの。156と書かれているのが製造年を表します。2000年以降は4桁になるのでこのタイヤは1976年の15週つまり4月に製造されたか、1986年4月または1996年4月に製造されたものです。2010年4月生産ならば1510となるのです。
タイヤは当時のミシュランと同じタイヤが今でも作られているので購入することになれば日本に到着してから交換します。
フットレストのカーペットはこすれや破れもなくクラッチペダルやブレーキペダルのラバーカバーも擦り切れていません。
距離を走っている車はほとんどの場合フロアマットのラバー部分の一部がすり減っているのですが上のような状態です。
こんなところをみてもおそらく32400㎞は実走行なのだと思います。
リヤトランクのカバーもシボが入った当時のオリジナル。
エンジンルームのエアダクトとエアークリーナーをつなぐ蛇腹のラバーチューブをとめるアルミのバンドはこのうすい金色のものがオリジナル。エアクリーナーカバーをとめる4つのネジも当時のものです。
こちらはセンターコンソール。ヒーターレバーやチョークレバーのメッキのフレームの傷みもなく、エアコンのスイッチパネルの塗装の剥がれなどもない状態です。跳ね馬の下の丸い筒は初期型のシガーライター。ここにたばこを差し込んで丸い枠を下に押すとニクロム線が赤く発熱してたばこに火がつくというシステムです。これも初期モデルにのみつくシガーライターです。
こちらは当時のマニュアルとそれを納めるブックレット。
残念ながら新車時の保証書はありませんが、何よりもクルマそのもののきれいさとオリジナル度の高さがこの固体の最大の魅力です。
こんなクルマと出会うこと自体が奇跡のようなことです。308の素晴らしさの一つは手作りだけのもつ美しさです。美術品のようなクルマのコックピットに座った時の高揚感、レザーステアリングに触れた感覚や丸いシフトレバーの操作感、そしてキャブレターエンジン独特のドライブフィール。ブレーキングの後ステアリングを切って横Gを感じながらコーナーに侵入する時のあの感覚はいつのってもわくわくします。
オーナーからいろいろと話をお聞きして譲ってもらうことにしました。
従妹には見て欲しいポイントを前日に事前にメールし、実際にクルマを前に確認してもらい、リアルタイムで送ってもらった画像をみながらチェックでき、私がイタリアに行くことのできない状況下の現在、非常に助けられています。
すでに何十台ものフェラーリを一緒にみてもらっているのでとてもたよりになる従妹です。
40年以上も経過しているので1台1台同じコンディションのものはありませんが、このクルマのようなオリジナルコンディションの固体に巡り合うことは今では大変貴重で年ごとに少なくなってきています。
また1台イタリアからの素晴らしい308がやってきます。東京入港は8月予定。