chassis#08700 の Dino308gt4

今回の出張でみたかったもう1台のフェラーリは75年の初期型のDino308gt4です。
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1975年1月27日にモデナにあるFiat のディラーS.C.A S.p.a Concessionaria Fiat にデリバリされ、
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同年2月25日にMO342142のナンバーで登録される。その後1977年9月15日にReggio Emilia に引っ越し、奥様の名義に変更。ナンバーはRE299629に。78年5月24日には奥様(実質的にはご主人)がLuciano 氏にこのgt4の外国での使用許可を出している書類も残っている。おそらくスイスかフランスにでもツーリングに行かれたのだろう。その後Lucianoさんと結婚したLorella (奥様の妹)さんに名義が変更されている。それらの書類がすべて残っているのもファミリーが所有していたという特別なクルマだからなのです。Luciano氏は最初のオーナーからずっとこのクルマをみていたメカニックで後に妹と結婚した人で、実際はその人に譲られたということ。今回そのご主人が亡くなったため名義人であるLorella さんが売りにだした2オーナーのgt4なのです。
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走行は46年間でわずか25,691㎞。イタリアへは入国ができないので代わりにローマに住む従妹にオーナーの元へ行ってもらい、クルマを確認してもらった。
電話でオーナーと従妹を介してクルマについて質問や必要な写真をその都度送ってもらい、1時間半ほどの商談でした。

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写真では本来マフラーの色は黒だがシルバーのものが装着されているのでまず確認。よくみると錆防止のために塗装しただけだということがわかった。
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マフラーの太鼓にはオリジナルのパーツナンバー160582が打刻されているのを発見したからだ。
このマフラーだけでもgt4オーナーにとってはのどから手が出るほど欲しくなるもので世界中探してもまず手に入ることのないほど貴重なものなのです。前後のラバーバンパーも初期の薄いタイプの方がよりすっきりして美しい。
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フロントにつくDinoのバッジや
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トランクにつくDino308gt4 もオリジナル。今ではこれも非常に貴重なアイテムです。
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トランクがアルミでできているのも初期型のみで、のちにスチールに変更される。このgt4はアルミ製。
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トランク内のカーペットのきれいさもこのクルマの魅力のひとつで低走行の目安にもなる。
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運転席の下のマットやフットレスト,各ペダルのラバーカバーからもおそらく25000㎞という走行距離はオーナーの言うように実走だろう。
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正面からみるとヘッドライトがメッキバンパーの隙間から見えるものは過去に事故を起こしている可能性があるが、
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この固体は左右ともきっちり隙間があっていてポップアップライトも隙間からみえることもない。バンパー下につく左右のCARRELOのフォグランプも初期モデルの特徴でフェラーリの名前になった後期モデルよりも精悍でスポーティな印象がある。ラジエターグリル奥に見えるグレーの羽をもつ電動ファンは当時のオリジナル。
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左右のフェンダーにつくウインカーライトももちろんオリジナルだ。ワイパーもカレロ製のものがつく。
こちらも今では入手困難なパーツです。
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内装は初期型の特徴の全面アルカンタラ。

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シートやダッシュボードはすべて1975年にフェラーリから出てきたままの状態を維持していおり、運転席左のサポート部分に多少のすれはあるが、他は工場からでてきたままといってもいほどのコンディション。
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これはオプションのエアコンのスイッチ。皮脂で黒いペイントが剥げているものもある中、まるで新品のようです。
45年間この状態をたもつということはオーナーがいかに大切にしていたかがわかるのです。レストアしてため息がでるような新車のように蘇ったクルマも素晴らしいですがマラネロからデリバリされ45年が経過してこれほど美しいgt4はお金では買えない貴重なものです。
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まさに私にとってはコックピットに座ると当時の時代に手で触れ、アクセルを開けて全開で走るたびにニキラウダやレガツォーニの時代にワープできるうようで、こんなクルマに出会えたこと自体が夢のような出来事に思えます。

シートベルトはロールアップ式ではなくこのだらんと垂れたものが装着されていた。ポールフレールが試乗記で雨の日にはコのベルトが外に落ち、フェラーリの名にふさわしくないと酷評した記事が今でものこっている。後に巻き上げ式のものに改良されている。
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運転席後ろにつくリアのトランクとボンネットのオープナーもクラックなどのない状態。
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ドア内張は75年初期モデルは縦のステッチもはいらない。
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室内灯もすべて長方形のものがつく。
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フロントウインドウは新車時のものがそのまま装着され、交換された跡はない。メッキモールの角の納まりをみれば判断できる。唯一オリジナルでないのはDinoのホーンボタンだが、これは時間さえあればオリジナルが入手できるだろう。
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フロントのスペアタイヤセクションをみるとカバーは初期型のみファイバーに革がはってあるこのような仕様になっている。
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ちなみに中期以降は上の写真のように一体形成のプラスティックに変更された。ブレーキフルードチェックの丸いふたもなくなっているものがほとんどだがついているのもいい。
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工具はけっして上質とはいえないが、Ferrari の打刻のないエヴェレスト製でこれが当時の75年のモデルの純正工具なのです。
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ジャッキやバルブ、予備のエアコンとオルタネーターのベルトも革のケースにすべて揃っています。
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さらにフロントに納まるスペアタイヤは使用されたことはないようで、ステッカーははがれておらず、
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ホィールもこの美しさです。
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左前につくウインドウウォッシャータンクも当時のもの。
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エンジンルームは埃はかぶっているものの、すべてオリジナル。ダクトとエアクリーナーをとめるバンドとオイルクーラーとラバーチューブを固定するバンドは金色の当時のものがそのまま使用されているのもいい。クリーニングをすれば見違える美しさになる。タイミングベルトは2019年9月に交換済み。
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ホィールはDino とCROMODORAの刻印のみでFerrari の打刻はない。
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状態のよい美しいホィールキャップにつくDino のデカールはプラスティック製。タイヤは2017年11週のものに交換されている。このホィールもキャップも今では入手不可能でこれだけでも価値がある。
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サイドにつくDesino Bertone のエンブレムは新品のような輝きを放つ。
キーこそオリジナルではないが、
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マニュアルケースは右下にDino の文字が入った初期型だけの茶色の革製のもの。

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保証書はグリーンのもの。
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マニュアルも本来緑のもののはずなのですが、赤い新しいものが積まれていました。しかしそんなことは些細なことで何より素晴らしのはこんな固体と出会えたことです。東京に入庫してからは多少の塗装の補修とフュエルホースやウォーターホースなどの交換は要するだろうが、オリジナルコンディションでここまできれいな状態でしかもある程度手が入っている車に巡り合うことはまさに一期一会でヒストリーまでしっかりと残っているのもうれしい限りだろう。
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オーナーからはかつて主人が大切にしていたクラバッタ(ネクタイ)も2本いただいた。
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あの甘美やサウンドやコーナリングでのアクセルワークで容易のノーズの向きを変えられる応答性の良さ、今でもスポーツカーとして十分に速いエンジン、それに美しいインテリアにカロッツェリアで職人の板金工がハンマーでたたきながら何時間もかけて形成して作り上げた美術品のようなボディライン、gt4にはこの時代のクルマにしかない魅力があります。

日本到着予定は7月。


  by cavallino-cars | 2021-05-07 18:01 | Comments(0)

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