308GTBのオーナーからの手紙

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先週、昨年の12月に納車したオーナーから手紙をいただいたのでご紹介します。

308を納めていただいて、はや9ケ月。

ますます快調で週末のドライブをたのしんでいます。

私の308との出会いは1977年に母につれられて行ったスーパーカーショウでした。

その時の写真は今でもアルバムに残っています。

当時9歳だった私はいつか大人になったら絶対にフェラーリを買おうときめていました。

しかし大人になって購入したのはGT-R、NSX、911ターボ、AUDI RS6 と速いが壊れず、

雨でも、夏でも快適に乗れる実用的なスポーツカーばかりでした。

あれほど夢中になっていた当時の情熱はなくなり、現代のフェラーリは当時のイメージし

ていたクルマではなくなり、どうしても欲しいという気もちは失せ、もはやフェラーリを

生涯買うことはないと思っていました。

年をかさね、少し余裕ができて実用性度外視のコブラを購入。

純粋な趣味と割り切って付き合えばクルマとの生活はもっと楽しめるということを知りました。

それから真剣にまた当時あこがれたフェラーリの購入を検討し始めたのです。

自分にとっての欲しいフェラーリはDino246、308GTB、そしてBBの3台。

328以降はリアルタイムでみてきたせいかどうしても欲しいという気持ちには

なれませんでした。もちろん最近のフェラーリにも全く興味がもてません。

そこでコブラを売却して手に入る308GTBを選び、友人にも相談しはじめました。

聞こえてくる意見は、すぐに壊れる、パーツが入手できない、修理代が高額、がっかりするほど

遅いなどの否定的なものばかり。

40年も前のクルマなので真実を知る人がほとんどいなく、本当のことはさっぱりわからない。

そんな中背中をおしてくれたのがCAVALLINOのブログでした。

308の大量の情報、隠された魅力、見直すべき美点、、問題点、そして何より308への

深い愛情があふれ、多くの人にこのクルマの魅力をみなおし、

楽しんでほしいという気持ちが文面に溢れていました。

あきらめる前にこのブログを信じてみようという気持ちになったのです。

子供の頃の衝撃的な出会いから40年以上の歳月がながれ、やっと自分のガレージに308が

きました。しかも初めて母に連れられて行った1977年のスーパーカーショウと同じ年に

ラインオフされた1977年モデル。

その車がガレージあるということはスクリーンで憧れた女優が当時のまま目の前に

降りてきたようで、足が地に着かないような気持ちでした。しかも、高揚感と満足感もある。

同時に勝手に神格化したイメージが壊れてしまうような怖さもありました。

当時あこがれた女優が、実は厚化粧の老婆だったとしたら。。。

憧れのビンテージフェラーリの実際のところは、どうだったのかの感想をお報せします。

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週末の早朝、家族を起こさないようにそっと玄関のドアを閉め、ガレージにわくわくしながら

向かう。なめらかなボディラインをみるたびにしばしみとれるわずかな時間。

この上なく美しいクルマが自分の所有物であることの悦びを感じてしまうひと時です。

このうようなクルマへの特別な感情は308を手にするまで決してありませんでした。

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華奢なオープナーでドアを開け、コックピットに滑り込み、意外にも気密性が高く、半ドアに

なりやすいので、分厚いドアをやや勢いをつけて閉める。

ミラーでサイドのエアダクトとドアのラインが綺麗につながっているかをみてドアがきちんと

閉まっていることを確認する。ペダルのオフセットはコブラに比べれば不自然さも

とるにたりない。コックピットは快適で広大なウインドウのために圧迫感はない。

インテリアデザインは現代の車には望みようもないビンテージの魅力に満ちている。
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小ぶりなメーターナセルが載ったダッシュボード、アルミの削りだしのメーターパネルに端正な

書体のメーター、

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中央にキャバリノランパンテのつくモモの革巻きのステアリングホィール、シフトパターンに

区切られたゲートに黒いノブのつくシフトレバー。

ストイックでミニマムなデザインは60年代のコンペティションモデルを意識させる。

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ディトナやBBと同じ美しく、クラシックなトグルスイッチは、華奢で動きも渋く、扱いに気を遣うが、

操作するだけでうれしくなる。

今は見かけることのないカセット付きのオーディオにクイーンやビリージョエルのカセットを

いれると10代の懐かしい日々がよみがえる。

パワーウインドウは動きが渋く、途中止まりそうになりながらもなんとか開け閉めが出来る状態。

窓は乗り込んだらすぐに全開にして、運転中はフェラーリのサウンドを楽しむ。

シンプルなインテリアはよく見ると実に手の込んだしつらえになっていることに気が付く。

おおよそ見えるすべての部分が手触りのよい革やビニールレザーで覆われている。

それはスロットルペダルやドアポケット内側にも及ぶ。

シートも皺ひとつなく見事に張り込まれているのはイタリアの職人ならではの仕事だと思う。

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フロアとタイヤハウスの革のトリムのついたウールカーペットは土足で乗るのがはばかれるほど

だが、そこがまた贅沢な気分にさせられる。

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雰囲気にそぐわないフロアマットは置きたくない。

インテリアに派手さは一切ないが、手間とコストが惜しまず注がれた当時の一級品であることを

所有して初めて知りました。

エンジンを始動する前に60年代風の指の切られたメッシュのドライビンググローブをつければ

気分はさらに高揚する。

サイドブレーキは効きが悪いので駐車時に1速にいれておいたギヤをニュートラルに戻し、

イグニッションをON にすると燃料ポンプのクーツと作動する音が聞こえる。

冬場でもチョークは使用せずにスロットルを2度ほど軽くあおりセルを回すと瞬時に火が入る。

キャブレターの始動の儀式は少しだけ緊張するがクルマと対話するようで楽しみでもある。

クラッチはコブラを乗っていたせいか重く感じない。以前乗っていた964ターボと変わらない。

ブレーキとスロットルペダルの配置はヒールアンドトーをするのに絶妙の位置で、

シフトダウンが楽しくなるほどだ。

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当時のフェラーリ独特なシフトパターンの区切られたゲージはいかにもフェラーリを操っている

感があるがビギナーには慣れるまではついついシフトの度にゲージをみてしまう。

ステアリングコラムから伸びるワイパースイッチやライト、ウインカーのアームはその操作感も

好ましい。

コックピットから眺める緩やかなフェンダーラインの美しさはいつみてもため息がでるほど。

ドアミラーごしに見える盛り上がったリヤフェンダーラインや吸気ダクトも308だけのもつ

美しさだ。クーラーは寒いほど効く現代のクルマにはおよばないが、十分にコックピットを

冷やしてくれる。

水温計は5分も走れば上がり始めるが、水温が80度をこえても油温は60度のまま。

ドライサンプのため上昇するのに時間がかかるが、70度にあがるまでは回転を押さえ走る。

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加速は強烈というほどではないが、4500回転くらいから快音とともにいっきに勢いつく。

シフトダウンしてアクセルを蹴飛ばせば、40年前の車とは思えない勢いで猛然とダッシュする。

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高速になるとさらにエンジンは生き生きとし始め、スロットルレスポンスは鋭くなり、軽快に

ふけあがる。 308が遅いなんて誰が言ったんだろう。

この高揚感と快感がえられるなら他にもとめるものはない。

街中での注目度はモダンフェラーリとはまた違ったもの。

何度も声をかけられたり、写真を撮られたりしたが、まわりの視線がやさしく、穏やかに感じる。

同じフェラーリだが、近年のカーボンを多用した派手なワイドボディやレーシングカーのような

大音量の排気音のモダンフェラーリとはまったく異なるクルマなのが心地いい。

クラシックフェラーリと付き合うにはお金だけではなく、エンジンの始動の仕方やメンテナンスも

含め、愛情と情熱が必要なのだと感じる。

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自分にとって308はどうだったのかと聞かれたら、子供の頃から抱いていたイメージは壊される

ことはなく、ビンテージだからそろそろといたわりながら乗らなければならないという予想とは

異なり、操作も乗り味もスポーツカーそのもの。すぐに壊れることも、遅くてつまらないという

こともまったくない。

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扱いやすいパワー、小気味よいハンドリング、しなやかな足回り、信頼できるブレーキ、そして

その気になれば、振り回して楽しむことさえできる。

さらに70年代屈指の魅力的なスタイリングや素晴らしいインテリアがくわわる。

何より最高のコンディションなのがうれしい。

ゆっくり走っていてさえわくわくするほど楽しいクルマなのです。

このような感動をあたえてくれる買い物が他にあるでしょうか。

フェラーリ308には単なるクルマや機械として語りきれない魅力があるように感じます。








  by cavallino-cars | 2020-09-01 16:24 | Comments(2)

Commented by 赤いシートカバー at 2020-09-02 14:29 x
素敵なお手紙の公開、ありがとうございます!

“このような感動をあたえてくれる買い物がほかにあるでしょうか”全く同感です。

この車を手放してまで欲しい車がなくなる、そういう魅力が308シリーズには、ハスミコーポレーションの車にはあります。
Commented by cavallino-cars at 2020-09-08 18:47
このオーナーからの手紙には私が感じたことのほとんどすべてが書かれています。いまだにコックピットに座り、革まきのステアリングを握るたびにワクワクします。40年も前に作られたこのクルマは今でも私を魅了し続けています。

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