812 と F40

今から32年前、F40 が4500万円で販売された。

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当時は限定400台というリミテッドエディションということもあり、すぐに完売した。

今ほどではないが、プレミアがつくほどだった。

450馬力は当時のフェラーリでは最大。

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そのサウンドとレーシングカーのようなエクステリアやインテリアはスポーツカーそのもの。

ターボが効いた時の暴力的加速は市販車とは思えないほどで、

まるでブラックホースに吸い込まれるような感覚だった。

首都高速の入谷からアクセルを全開にした時に

思わず叫びたくなるような衝動にかられたことは今でも憶えている。

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あれから30年、800馬力の12気筒812スーパーファーストに乗る。

インテリアはオプションのカーボンパネルを装備した車でも、

F40 に比べると格段に豪華なGTに見える。

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ダッシュの白のステッチも美しく、ブラウンのストライプに白のステッチは

まるでエルメスのようなエレガントさがある。

コックピットは広く、スパルタンなF40のようなドキドキするような興奮はない。

しかしひとたびアクセルを床まで一気に踏み込むとその印象は一変するのだ。

F40のターボがさく裂した時ような強烈な加速が低速から始まり

ドライバーをシートに押し付ける。

おそらく70年代のニキラウダやハントが乗っていた F1と同じような加速。

1速、2速、3速とF40では床まで踏むことができたアクセルが、同じ8気筒の488では出来ても、

812はあまりに速く、踏み続けることが難しい。それほど速い。

首都高速でハンドル上部につくエンジン回転を表示するLEDライトが右端まで

点灯するレブリミットまでアクセルを踏み続ける勇気あるドライバーはまずいない。

レースでも経験していない限り、スピードの恐怖心で右足を戻してしまうほどすさまじい加速。

F40ではテールがズルズルとすべりながら外に膨らもうとする車体をステアリングで

おさえこみながら走る。

そんなコーナーでさえ812では強烈な横Gを感じながらも

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軽くステアリングに手を添えてる程度でクリアしてしまう。

4灯式になったテールライトも、クラシックフェラーリのようで好ましい。

その気になればサーキットでもF40をコーナーでアウトから抜き去ることも容易だろうし、

ひとたび前方がクリアになれば間違いなく、40を一気に置き去りにする。

812のコーナーの安定性はその限界が高すぎて、サーキットにでも持ち込まない限り、

軽いドリフトさえも体験することは難しいだろう。

すでに生産は終了しており、数千キロの中古車は4500万円ほどで売られている。

豪華な内装とピュアスポーツが同居しているフォーミュラー1のような加速をする812と

パワーでは350馬力ほどおとるが、床には絨毯もなく、ドアには内張もない、

パワーウインドさえ装備されないレーシングカーのようなF40とどちらを選ぶかは

正直迷うところではある。

812はその気になれば毎日でも乗れるスーパースポーツで、ラゲッジスペースさえ備えている。

それに比べF40は車をコントロールするというスポーツカー本来の楽しさはあるが、

乗る場面が非常に限られる。

それに812を乗った後ではあれほど速いと思っていた40が緩慢な加速に思えてしまう。

40は実際に乗っていた経験もあり、今のような価格で購入する気にはなれないが

仮に今F40 を所有していても、

エンツォの遺産のようなF40と

最先端の技術のつまったまさにスーパーファーストな812の

どちらをガレージにいれるかはかなり悩むところ。

F40の価格が今や1億をこえることや乗る機会が少ないこと、

それに今の年齢を考えれば私は812をチョイスするかもしれない。

それほど812は魅力的な1台なのだ。



  by cavallino-cars | 2020-02-06 19:23 | Comments(0)

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