車の愛し方

車の愛し方は人それぞれ異なる。
形に魅せられる人、速さに惹かれる人、音や臭い、内装など。

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私がフェラーリに初めて乗ったのは22歳の時。80年モデルの日本仕様のDino308gt4。
フィアットのX1-9、アルファスパイダー、ロータスエスプリと乗り継いできて、念願のフェラーリを手に入れた。
ボディはロータスとは比べられないほど強固で内装も同じ手作りでもまったくそのテイストは異なる。
ショップから初めて自分でステアリングを握って帰ってきた時のことは今でも憶えている。

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コックピットの独特な臭いや高速でのキーンというジェット機のような音、なめらかでトルクフルなエンジン。
フェラーリならではの世界に惹きこまれた。


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当時は308GTBはgt4よりも200万円ほど高価だったため手が出なかったが、購入したgt4は本当に新車のような固体だった。
日本仕様のgt4ではあったが、22歳の私にはまさにアナザーワールド。週末のドライブが楽しみでならなかった。
フェラーリというブランド、キャブレターエンジンの独特なサウンド、イタリア車ならではの内装の素晴らしさに惹かれた。

ヒールアンドトウも知ってはいたが、正しいやり方や車の挙動やスポーツドラビングのいろはさえ知らなかった。
欧州仕様とのエンジンのピックアップの良さの違いなど知る由もなく、それでも十分すぎるほど刺激的だったのだ。
松田コレクションの松田さんやその友人たちにもお誘いいただき、10台以上のフェラーリでのツーリングは夢のような時間だった。
一人で早朝、箱根まで走りに行ったこともあった。

今は亡き車好きだった父を助手席に乗せてターンパイク、長尾峠を走ったことはいい思い出だ。
そのコックピットは世界最高のスポーツカーと呼ぶにふさわしく、ハンドルを握るたびに胸が躍った。

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その後は328、テスタロッサ、カウンタック、BB、288、F40、355、360、575、430、と仕事がら多くのスポーツカーにも乗った。
そんな中で私のカーライフを変えたもう1台は348だ。
348チャレンジでレースに参戦したことで車をコントロールする楽しさを覚え、ますます車が、そしてフェラーリが好きになる。

今まで知らなかった車の楽しさをレースを経験したおかげで知った。
それまでは車の楽しさの3割ほどしか知らなかったと思う。
レースをしたおかでで今まで見えなかった70パーセントの車をコントロールする楽しさを知った。
年間1000万円ほどレースに費やせる人は少ないだろうが、出来る環境にある人には是非お勧めしたい。

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5速から4速にシフトダウンして強烈なGを感じながら、コーナーにはいる。
アクセルを急激に閉じればスピンしてクラッシュする速度でタイヤのグリップをステアリングに感じながらのコーナリング。
その状況でアクセルを少しだけ緩めるとノーズがスッとインに入るあの感覚。
車をギリギリのところでコントロールする楽しさは麻薬のようなもので、レースとなればそれは媚薬だ。

レースというカテゴリーであれば勝つために間違いなく一番新しく、速い車を選ぶ。
しかしプライベートで選ぶなら乗って楽しく、自分だけの1台になるようなものを選びたい。

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そんな時に英国で出会ったのがDino308gt4だった。
ヨーロッパ仕様のその車のレスポンスは過去に所有していた日本仕様のものとはまったく別物だった。
エンジンはアクセルのほんの少しの踏み加減でもリニアに反応し、バランスは小雨の降るスコットランドを容易にドリフトさせながら走らせることができるほど感動的だった。
レースをやっていなかったらこの素晴らしさに気がつかなかっただろう。

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今自分のガレージに入れるなら308GTB、GTS、Dino308gt4、208gt4とGTBターボの中から1台をチョイスする。
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もちろんF40 のような別格に楽しい車もあるが、1億以上もする車を買うのはよほどの資産家でもない限り、現実的にむずかしい方がほとんどだろう。
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今の私なら1億を払うなら間違いなく70年代のF1を買う。

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その意味でも上記の5台はどれをとってもリーズナブル?でベストチョイスだ。
レーシングカーのようなハンドリングとコーナリング、ミッドシップならではの挙動は348でレースをはじめた私には実にコントロールしやすく、馴染みやすい。
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BBは美しいが、スポーツカーと呼ぶにはあまりに重く、デイトナはブレーキがプアすぎる。
大きさ、コントロールのしやすさ、あらゆる面でこの5台が私にとってはベストフェラーリなのです。

GTBターボを選び、328をあえて選ばなかったのは大好きなあのF40 のスリリングさがGTBターボにはあるからだ。

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キャブの308にのるとニキラウダやビルヌーブがF1をコントロールしていた時代にタイムスリップしたようだ。
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F312のF1マシンとは異なるがコンマ何秒にすべてをかけて走った彼らのスピリットを感じる。
8年ほど前から308の輸入をはじめ、何十回もイタリアを訪れた。
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美しい街並み、古いものを大切にする彼らの生き方、何よりも美しいものを愛するイタリア人の美への執着がクラシックフェラーリには確実にある。
だからこそ今みてもはっとする美しさがあるのだろう。
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美しいモデナの街やフィオラノに立ったときと同じ感動が308のコックピットに座るたびにおとずれる。
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マラネロでフィオラバンテ氏のスペシャルな308を譲り受けたことも私のこの車への特別な感情となっている。
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エンツオが生きていて、フェラーリが全盛だった頃の素晴らしさとイタリアの美しさがつまった308は特別なもの。
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70年代へのノスタルジーなのかもしれない。

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手のひらが汗ばむほどコーナーをアクセルコントロールしながらクリアしていく。
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40年前に作られた車を本気でとばす。
こんな走りができるのはフェラーリならではだろう。
ドライビングの後に眺めるそのボディの美しさはより輝いてみえる。
スポーツカーは速く、美しくならなければならないというEnzo の言葉そのものがこの車たちには息ずいているのだ。

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F1で培った技術と歴史、
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古いものを大切にする文化、
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美しいものをこよなく愛するイタリア人が熱狂するほどのスタイリング、官能的なサウンド、そしてスポーツカーとしてのコントロール性の高さ。その一つでも欠けていたらこれほどまでにこの車にこだわることはなかったにちがいない。
美しく、速く、運転して無常の歓びをあたえてくれる車が私は好きだ。

そんな車を今年もお届けしていきたい。

謹賀新年




  by cavallino-cars | 2018-01-02 02:13 | Comments(1)

Commented by フェラーリ好き庶民 at 2018-01-05 14:03 x
22歳の若さで既にフェラーリオーナーとは羨ましい限りですね。そんな若くして自分の力で手に入れていたのなら、その経済力は凄いの一言です。

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