やっぱり速い!Vetroresina
今回は油脂類の交換を含む定期点検作業の他にアクセルを踏むと油圧が下がるという症状がでたため油圧計を交換。
さらにエアコンのコンプレッサーの不良もあったため、こちらも新しいものに交換した。
以前私が246を所有していた時はエアコンがないために5月から10月まではほとんどガレージからだすことはなかった。
今日のような天気でもエアコンのおかげでGTBのコックピットはその狭さゆえかgt4よりも快適だ。
それにしてもやはりこの車のハイライトはピックアップの素晴らしいエンジンレスポンスだろう。
コレクターの多くはファイバーボディという希少性にのみ注目するが、私は違う。
オリジナリティーの高さとそのドライブフィールだ。どんなに走行距離が少なく、新車のような固体でもアクセルを踏んでレスポンスの悪いものではこの車を所有する意味がないと考える。
いっきに吹け上がるエンジンレスポンスこそこの車の真骨頂なのだ。
ノーマルボディよりも100キロ以上軽いボディはアクセルを踏むと蹴飛ばされたようにノーズアップして加速する。
しかしどのファイバーモデルもこのような加速をするとは限らない。
きちんとキャブ調整をすませた調子のよいエンジンだけがこの車のもつ本来のポテンシャルをひきだしてくれる。
シングルパイプマフラーはgt4より少しだけ静かな乾いたサウンドを奏でる。
ひとたびアクセルをオフにすればコックピットはあのキーンというクラシックフェラーリ独特の金属音でみたされるのだからたまらない。
246のように少しこもったような排気音とはことなり、乾いた独特の管楽器のような音色を奏でる。
細いステアリング、華奢なシフトレバー、優美なスイッチ類、どれを見てもモダンフェラーリにはない手作りのもつ優美さに溢れている。
ターンインでステアリングをきり始めたとたんにリニアに反応する様はスポーツカーそのもの。
細いステアリングからは路面との接地感が的確にドライバーにつたわってくる。
ハイスピードでコーナーに侵入して、横Gを感じながらのコーナリング中にアクセルを少しだけもどせば、ハンドルをきることなく、ノーズはスッとインに入っていく。
アクセルだけで向きを変える挙動はレーシングカーのようだ。
低い着座位置もあいまってgt4より、スポーティな印象をうける。事実アクセルレスポンスにも確実にボディの軽さを感じる。
1976年にこれほど官能的なスポーツカーは他になかった。
フェラーリの市販車で初のファイバーの採用にあたり、ニキラウダはフェラーリはF1で何年もその使用実績があるので問題ないと言っていたが、308のファイバーボディの強度は当時のF1とは比べられないほど強く、スチールボディと見比べてもドアを開けるまでわからないほどよくできている。
クラックひとつないこの固体をみてもそれは明らかで素晴らしいできばえだ。
総生産台数712台。そのうちの数百台は北米向けのウエットサンプで、欧州仕様は500台にもみたないのではないだろうか。
どのフェラーリもそうだが、乗ってみなければその良さはわからない。
ファイバーモデルだからすべていいということはない。
このchassis# 19389のファイバーボディの素晴らしさはステアリングを握り、アクセルを全開にすれば誰もが納得するだろう。
308Vetroresina はフェラーリの歴史の中で最初にグラスファイバーを使用したモデルとして注目されているが、美しさ、エレガントさ、速さ、音の素晴らしさ、手作りの内装の感触、すぐれたコントロール性、フェラーリの歴史の中でもっともスポーツカーらしい1台だと思う。
ファイバーボディのこのての修正は時間も経費もかかり、より安価で容易に修理ができるスチールボディに変更された。
カロッツェリアで1台1台作られていた308はこうしてマラネロの生産ラインで作られるようになった。
たったこれだけのラインにこだわったクレーマーのために短命に終わったファイバーボディが今ではスチールボディより高い価格で取引されているのも皮肉な話だ。
当時のF1のボディは薄く、ペラペラで一人でも軽く持ち上げられるほどのものだった。それほどスポーツカーにとって軽さは重要で、それにより運動性能は格段にアップする。その意味でも712台のファイバーボディは貴重なのです。
しかもうれしいことにこの固体は前オーナーが日本に到着後、クラシケを取得する際に、前後のAアーム、スタビライザーなどのブッシュをすべて交換している。
その結果、ハンドリングは大幅に向上し、まるでカートに乗っているようなソリッドなインプレッションを与えてくれる。
フェラーリにとって爆発的な販売台数を記録した308シリーズ。その後、インジェクションを採用した308GTBi、QV、328と進化して空前のロングヒットとなった。その中で今乗って最もエキサイティングなモデルは間違いなくこのファイバーモデルだろう。
ガレージにオブジェのように飾るコレクターではなく、スキッド音を鳴らしながらコーナーをクリアしていくような方に是非乗っていただきたい。そうでなければこの車の本当のよさはわからないだろう。
何度もいうが実際にのってみなければその良さはわからないのです。
by cavallino-cars | 2017-06-20 13:54 | Comments(0)