
2009年6月にDino308gt4 に魅せられ、すでに7年が経過した。いまだにその魅力にとりつかれている理由はなんだろう。フェラーリというイタリア人にとっては誰もが敬意を払い、その伝統と美しさに憧れと誇りを持つブランドはひときわ輝きを放つ。

その魅力はそのもの作りとフォーミュラ1というレースに参戦していたメーカーということに原点があると考える。

コックピットに座った時に感じる手作りのぬくもりのような感触。それは丁寧に人の手ではられたダッシュボードや、手縫いで縫製されたステアリングホィールなどからドライバーに伝わってくる。シートの独特な座り心地や美しいダッシュボード内のメーター回りやコンソール。

大量生産の車からは感じられない妥協のない美しさにこだわった当時の職人の息吹のようなものが伝わってくる。

その中でも308が特に異彩を放つのはそのコントロール性の良さにある。

BBやテスタロッサのような重くトラックのような操縦感ではなく、アクセルの開度でノーズが簡単に左右にふれるレーシングカーのような応答性と比類ないあのキーンというジェット機のようなサウンドを奏でる、トルクフルなエンジン。今乗っても官能的な308はドイツのメルセデスやBMW、フランスのアルピーヌとは異なる独特な世界がある。

当時のフェラーリは内装はすべて手縫いで、マラネロの熟練の職人により、丁寧に作られていた。塗装も今のようにオートメーション化されたものではなく、人の手によってガンで吹かれていた。優雅なボディラインは手作りならではの美しさで見るものを圧倒する。

その人の手によるぬくもりの感じられる車こそが今のモダンフェラーリとは異なる魅力なのだろう。

熟練のメカニックによるキャブレターの調整を終えたエンジンに一度乗れば、誰もがその魅力にとりつかれてしまうに違いない。あのビルヌーブやレガツォーニがプライベートでステアリングを握っていた車のコックピットにおさまるだけでも気分は高揚する。そんな70年代のフェラーリがガレージにある生活は実にエレガントで贅沢な時間を与えてくれる。

この車には古きよきイタリアがつまっている。

古いものを大切にし、美しいものをこよなく愛するイタリアそのものなのだ。