自分だけの1台としての条件

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70年代のキャブのフェラーリの魅力は何だろう。
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私はスポーツカーとしてのエンジンの素晴らしさとシャーシのバランスの良さ、それにボディの美しさの3つ。ミッドシップの308は運転して実にコントローラブルで多少すべらせてもポルシェのようにアンダーステアから急激なオーバーステアに転じて、スピンするようなこともない。
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本来スポーツカーとは車をコントロールすることを楽しむ車だ。アクセルをコーナリング中に少しだけ緩めるとノーズがスッとインに入る応答性のよさ、クリップをこえてアクセル全開にした時の立ち上がり加速やエンジンの独特なサウンド。
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かのジャッキースチュアートはコーナーはハンドルで曲がるのではなく、アクセルでまがるものという名言を残した。それを体験できるものこそスポーツカーと考える。
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その意味で限界の高すぎるモダンフェラーリをスポーツカーとして扱えるオーナーは何人いるのだろう。少なくともサーキット経験のあるものにしか難しいだろう。
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458や488のオーナーはそのポテンシャルの半分ほどしか楽しめていないにちがいない。
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もちろんそれが悪いという話をしているのではない。
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今まで体験したことのない加速はそれだけで魅力的で、すべてをコントロールしてくれるモダンフェラーリの制御システムは世界最高峰のスポーツカーメーカーにふさわしい。
しかし、私がいまだに愛してやまない308シリーズは255馬力のアンダーパワー?ながら、実にコントローラブルで運転していてこれほど楽しい車はない。
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40年の歳月を経て、コーナリングでは今だに現役のスポーツカーと比べても遜色ない。当時のキャブレター独特のキーンというフェラーリサウンドはクラシックフェラーリならではの魅力の一つだ。
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それにあのグラマラスなボディが組み合わさるのだからたまらない。
コントローラブルでエンジンレスポンスのよい車は他にもあるだろうが、それに美しさが加わるモデルは少ない。
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40年前に作られたフェラーリをスライドさせながらコーナリングし、クリップを超えて全開で立ち上がる気持ちよさは乗ったものでなければ理解できないだろう。
クラシックポルシェのようにアクセルを床まで踏んで徐々に加速していくエンジンとは異なり、足のちょっとした踏み加減にもリニアに反応するレスポンスの良さもいい。
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もちろんそのためには機関系やタイヤ、ブレーキ、ホース類などのメンテナンスは必須で、寿命になったパーツは新しいものに交換しなければならない。キャブの調整も必要だ。
しかしカーペットや内装、フロントウインドウなどはできるだけ当時のままのものが好ましい。
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フロントウインドウに小さな飛び石の跡やワイパーのスクラッチ傷を気にされてウインドウを交換するオーナーがいるがよほど大きなクラックなどのない限り、私ならオリジナルのまま乗ることを選ぶ。オリジナルだからこそ価値がある場合もあるからだ。交換してしまえばドライバーが飛び出し、フロントウインドウを割ってしまったことも考えられるし、どのような理由で換えたかはわからなくなってしまう。
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前回の出張で29日にベルギーに紺のgt4を見に行く予定だった。
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写真で見る限りは非常に魅力的な車だ。
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出張1週間前に依頼しておいたフロントボンネットとトランクルームの写真が送られて来たのは前日の金曜。すべてオリジナルと聞いてはいたが、念のため送ってもらったのだ。
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フロントには328のスペアタイアが納まり、トランクの内装は貼りかえられていた。オリジナルではないので今回は見にいかないというと担当者はわけがわからない様子。
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本人がオリジナルと信じているのだから仕方ない。フロントのスペアタイアはゆっくりとオリジナルを捜すことはできるが、トランクのカーペットはオリジナルには戻せない。交換するには理由があるはず。ちなみにこのgt4につくウインカーレバーはシャフトが黒い308QV以降のものか、リプロダクション品(OEM)。オリジナルのレバーはシルバー。
自分のガレージに入れるものはこんなところにもこだわりたい。ちなみにレバーがシルバーのウインカーユニットは今では入手不可能。
単にリアのカーぺットは少し汚れていただけで交換したのかもしれないし、フロントのスペアタイヤは紛失してしまったから328のものを入れたのかもしれない。
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しかしウインカーレバーはどう考えるのか。これらの交換はそれなりの扱いをされてきたから交換せざるを得なかったと考えるのが妥当だろう。(上の写真はオリジナル)その意味でオリジナルのパーツの残り具合はその固体のコンディションをみるバロメーターにもなる。
40年前のオリジナルのヒビだらけの塗装は決してよいとは思わないが、シートやカーペットはオリジナルのものが好ましい。
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上の写真がオリジナルのマテリアル。弊社では今までトランクのカーペットがオリジナルでないものは1台も輸入していない。当時のものでしかない雰囲気は必ずある。数十年も経過している車である以上、すべてがオリジナルという固体はありえないが、自分だけの1台として長く持ち続ける車は出来るだけ当時のものにこだわりたい。
gt4やGTB,そしてGTSは今では決して作ることの出来ない、イタリアの文化遺産といってもいい。
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オーナーはその継承者として安易にオリジナルのものを交換すべきでないと考える。オリジナルだからこその価値がある。

  by cavallino-cars | 2016-11-08 19:52 | Comments(3)

Commented by 308ファン at 2016-11-09 13:47 x
いつも楽しく拝見しています。
308シリーズの魅力が詰まっている銘文にアドレナリンが駆け巡るのを感じます。
オリジナルに対する拘り、共感します。
二輪の話で恐縮ですが、私の900SS(べベル)はこの種のバイクとしてはオリジナルを保っている
稀有な個体でしたが、先日追突されてリア周りを破損しました。
直しでリプロ品を使う部分も出て残念なのですが、こういうこともあるだけにオリジナルで残るものは
珍重されるのだと実感しています。
Commented by cavallino-cars at 2016-11-11 10:22
コメントありがとうございます。
バイクも車もオリジナルが一番と考えます。当時の物作りに対するこだわりが一つ一つのパーツからも感じられます。いいものは時代を超えて私たちを魅了し続けていきます。
Commented by 赤いシートカバー at 2016-11-15 12:52 x
お世話になっております。
『オーナーはその継承者として安易にオリジナルのものを交換するべきでないと考える』まさに同感です。いろいろな考え方がありますが、以前にもコメントさせていただきましたが、私は蓮実さんが輸入した308シリーズは、蓮実さんと購入者、そして308を愛し将来購入しようと夢見る方々の共有の財産のように感じます。
私は幸いこれまでにどうしようもないボロ車を手にしたことはありません。そのことでいつも購入した販売店と前オーナーに感謝しています。
しかし車好きの知人や友人が、車を購入したあとに事故歴や不良箇所の発見、別車の部品取り付けなどで良くない思いをするのをみると、悲しいです。それが高額車ならその気持ちははかり知れません。本人が納得できるのであれば救われますが、オリジナルにこしたことはありませんし、そうでなければ販売店にはそれなりの知識があり、説明ができるべきでは?と考えます。
車の購入はその車に思い入れがあればあるほど、蓮実さんのようにその車が好きで、愛情とも言える思い入れのある人から購入したいものです。
いろいろ購入者目線の偏りのある意見を書き列ねました。すみません。

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