今月のEdge のフェラーリ特集を読んだ。

ここ数年のフェラーリの高騰で512TR よりも512M がよいとか、限定モデルが買い得とか、599や612スカリエッティ が価格が比較的安いので買いとか、まるで株式の銘柄を勧める証券会社の営業マンのようなコメントばかり。

F430 は即買い銘柄!なんて記事はあまりの見識の違いに驚くばかりだ。
私が初めてフェラーリを購入した時は価格が下がらないとか、どのモデルが買いだとかいうことはいっさい考えもしなかった。欲しくて欲しくて、好きで、好きでたまらなくて、購入したものだ。

gt4を初めて買った時は契約書にサインする前にカーグラフィックの記事を何度も何度も読み返したのを覚えている。

そこには今のようなこれが買いなどのような記事はいっさいなく、そのハンドリングや官能的なエンジン音、ドライビングインプレッションが書かれていた。

デイトナはあの官能的ななフェラーリサウンドに魅せられても、プアなブレーキと重いステアリングが、購入する気持ちを抑えてしまう。
512TRや512M は12気筒ならではのどこまでも加速していくようなGTとしての楽しさはあるが、スポーツカーとしては大きすぎで、ヘビーなために応答性が劣る。もちろん先代のテスタロッサから比べればそのエンジンレスポンスや、ブレーキ性能も格段によくなってはいるが、ワインディングを楽しむような車ではない。
599と612を同列に並べ2台とも今が買いというのもどうだろう。599はスポーツカーとしては素晴らしい。個人的にはF12 よりもスポーツカーらしいと思う。しかし612は重く、スポーツカーとはいえない。612もその気になればスポーツカーそのものという方もいらっしゃるが、コーナリングスピードや応答性は599に比べ格段に劣る。その用途がまったく異なるのだ。

損をしないからフェラーリを買うというのは間違ってはいない。10年前のベンツのSクラスの査定価格は今や100万円にも満たないのに対しフェラーリの価格はそこまでは下落しない。それはあくまで2次的要因。スポーツカーならどれもセダンに比べ、査定は高くなる。それよりジャーナリストはその車のもつ楽しさや、他のモデルに比べての問題点などを指摘して欲しい。もっともフェラーリを悪くいうことは昔からタブーなので難しいのだろうが、あえて誰かが勇気をもって言って欲しい。456はエレガントで購入しやすい価格のフェラーリだが、ATは壊れるものが多く、そうなった場合は300万円ほどの費用を覚悟しなければならない。初期のテスタロッサはブレーキに問題があり、箱年のターンパイクではブレーキを酷使するとフェードしてブレーキペダルが床に落ちてしまう。ディーラーでは常識だが、ユーザーは知らない人が多い。

デザインでもドライブフィールでも何でもいい。自分の本当に気に入った1台を購入するべきだと思う。
もちろん損をしないから、価格が上がるかもしれないからという理由でかう方も否定はしない。

ここ5年で1500万ほどだったDino は5000万円にも高騰したのも事実。3000万円ほどならすぐにでも買いたい人がいるにちがいない。これほどいい投資はない。

BBは美しい車ではあるが、重い上に、エンジンの搭載位置が高いため重心が上になり、一度テールがスライドするとその修復にはレーシングドライバーでも簡単ではないだろう。アクセルレスポンスも308のようにシャープではない。コーナリングGをかけすぎるとドライブシャフトを破損することもある。

BBはコーナーを攻めるような車ではなく、休日に別荘にでもいくためのグランドツアラーとしての車なのだ。何台ものフェラーリを所有できるような恵まれた方なら使い分けもできるが、ほとんどのオーナーは1台のフェラーリを所有するのみだろう。ならばコックピットに座っただけで胸躍る、好きなモデルを選ぶべきだろう。

私が308を選ぶのはデザイン、音、インテリアの素晴らしさに加え、そのスポーツカーとしての運転する楽しさだ。

カチ、カチとゲートに沿って入るシフトやコーナリング中にアクセルコントロールでノーズの向きをコントロールできるハンドリングの素晴らしさ、初めて魅せられてからもう7年にもなるが、いまだにコックピットに座り、ステアリングを握るたびにワクワクする。
ガレージに納めるフェラーリは恋する1台であって欲しい。