
この仕事をしているおかげで何台もの魅力的なフェラーリに乗ってきた。左の246gtは私の元の愛車。右はフランス人から譲り受けたキャブレターの308。

奥のDino208gt4はマントバから持ち帰った初めての208gt4。どれも魅力にあふれた1台だ。

今やDinoは30万ユーロ、日本円にして4000万円に価格が高騰した。

Dino の魅力は何といってもその美しいフォルムと軽いボディゆえのハンドリングの素晴らしさだ。エンジンも素晴らしい管楽器のような音を奏でる。しかし4000万円という代価の価値があるかと聞かれたら考えてしまう。


三角窓のストッパーは完全に閉めてしまうとガラスについたシルバーのノブが接着剤ごとポロリと落ちてしまうし、gts にいたっては室内から屋根をつけていても空が見えるほど隙間があいている。初めて購入したDino はgtsの欧州仕様だった。突然の雨でシャツのカフス部分がビショビショになったのを覚えている。
2台目のDinoはクーペの246gt。
ハンドリングは素晴らしく、ノーズの軽さも手伝ってひらひらとコーナーを抜けていく。

その快感はDino ならではだが、日本では秋と冬のほんの数ヶ月しか楽しむことができず、結局手放してしまう。

Dino308gt4は英国から譲り受けたものを2年ほど所有。

トルクフルで実に楽しい車だ。Dino に装備されていないエアコンがつくのも大きな魅力で気軽にどこにでも乗っていくことができる。

ひとたびワインディングにでればアクセルワークでノーズの向きを変えることもできるほどその性能はレーシングカーのようだ。4シーターとは思えないほどそのドライブフィールはスポーツカーそのもので、今乗っても十分に速く、楽しめるのだ。今ではこちらも1600万円以上に高騰してしまった。

308 ほどのトルクはないがDino208gt4はスポーツカー好きにとってはFun to drive な一台。今や最もリーズナブルなDino 。そのハンドリングやコーナリングはフェラーリの名に恥じないほど素晴らしい。

208gt4で4速全開でぬけるコーナーの気持ちよさは格別だ。

Dino246やDino206 の後継車と誰もが認める308GTBは大きさやスタイリング、コックピットの雰囲気などどれをとってもこれぞスポーツカーという雰囲気に溢れている。

キャブレターの独特な加速性能は言うに及ばず、コーナーでのコントロール性も秀逸で間違いなく12気筒フェラーリよりも運転していて楽しいのだ。

個人的な見解だが、308GTBは美しさでは246Dinoにはかなわないかもしれないが、そのドライビングの楽しさは246や206にも劣らないばかりか、上回るほど素晴らしい。246のヌメっと入っていくシフト感覚とは一線をきす、カチと入るギヤも心地いいし、60馬力のパワーアップの差は歴然でその加速性能は圧倒的に6気筒のDinoを凌ぐ。
今どちらか一台を選べと言われれば、間違いなく308と答えるだろう。

基本的にはgt4と同じユニットながらその着座位置の低さゆえか、よりスポーツカーとしての魅力に溢れている。ただしそれはヨーロッパ仕様に限られたもので、しかもエンジンの調子がよいものだけだ。
8気筒の内の1本でもプラグがミスファイアしていたらそのイメージは一変する。

それほどキャブレターの308は208gt4も含め繊細なのです。この写真の3台が自宅のガレージにあったらどれを乗るだろうか。

ちょっとした荷物やジャケットがおけるスペースのあるgt4が一番実用的だろう。308GTB は箱根の強羅あたりの温泉に行くには丁度いい。Dino は首都高をとばすぐらいか、せいぜい11月頃に別荘にでも乗っていくくらいだろう。実際にDino を所有していた頃は年に15日ほどしか乗ることはなかった。

今やファイバーボディのGTBはイタリアで20万ユーロ、2760万円。スチールボディのものでも1500万円以上もする。それでも良いものに巡り合う機会は少ないのだ。

人生は一度だけ。その時間も限られている。所有する悦びだけで満足する方は別だが、買うからには是非、出来るだけ乗っていただきたい。

これらの素晴らしい車と過ごす時間を刻みながら年を重ねていくことがその人の美しい人生をかたち作っていく。