
40年以上前に作られた車にどこまでオリジナルを求めるか。

ローマに住むイタリア人の従兄弟は一緒に車を見に行くたびに、私がここが気に入らないというとクラランタアンニ(40年)前の車だよといつも言われる。

選ぶ時の基準は何だろう。この車を一生持ち続けられるかとふと考える。塗装にはオリジナルは求めない。オリジナルペイントで美しいものなど現存するはずはないとはなから思っている。しかしながら再塗装の状態を見れば、前のオーナーがどのように扱ってきたかのバロメーターにはなる。チェックするのはその塗装のクオリティだ。

こだわりは内装、カーペット、

メーター、

ドアの内側につく小さなライト、

左右フェンダーにつくシグナルライトや、

各部の隙間の間隔などに及ぶ。細かいチェックポイントは数え上げればきりがない。
ドライブフィールも気をつかう。308の最大の魅力はV8エンジンだ。エンジンから異音がしたり、ミッションもシフトダウンでギヤ鳴りがするものやうまく入らないものは100万円単位の整備費を覚悟しなければならないので注意しなければならない。

幸い308はまだ246Dino のように5000万円もの市場価格がついていないため、フルレストアしたものはほとんど存在しない。
246の中にはレストア前の状態がサイパンに何十年も放置された戦車のように朽ち果てそうなものもある。
美しい外装からは想像もつかないレストア前の姿を見たら購入意欲が一気に失せるだろう。
246Dinoのシートベルトがバックル式の現代のものに交換されているものは以前の状態がわからないので私は買わない。
なぜ交換せざるを得なかったか、不思議と思いませんか?

308 はシートベルトを交換しているものは、特別な理由がない場合以外は購入しない。

他にも、gt4にドライサンプのエンジンが載っていたり、

欧州仕様のGTBのエンジンがツインデスビだったりするようなものには決して手を出さない。

シートが当時のものではなくインジェクションになってからのものに交換されているものも買わない。

当時のオリジナルをたもっているからこそ、価値があるし、安心もできる。308にセンターキャップの3ピースのホィールをつけているものはそれだけで購入意欲はなくなる。これはオーナーの美意識の問題なので元にもどせるものなら購入する場合もある。

クラシックフェラーリのオーナーになるということはその歴史をひきつぐこと。そういう意味で価値のあるもののみを選ぶことが大切なのです。

購入してからのトラブルはオーナーの自己責任。私は長年の経験から知りえた知識をもとに出来るだけオリジナルの部分の多い車をご紹介するだけ。
もちろん事前に整備は行うが40年近くも経過した車は予測のつかないトラブルも起こる。
クラシックのある生活は楽しいが、その素晴らしさを維持することもカーライフのひとつと考えられる方のみの大人の趣味の世界なのです。美しいものを維持するには費用がかかるのは当然。

その原因にもよるが、トラブルで車が止まってしまって、ディーラーに騙されたとか、憤慨するような人には308はお勧めしません。今や2億円以上するルッソなども同様です。トラブルのない車を望むなら新車を買うことです。
しかし新車のフェラーリは別。F12 や458 はひと月エンジンをかけなければバッテリーが上がり、車庫から出せなくなりますし、先日納車したばかりのF12 はセンサーの不具合でエンジンが2000回転以上まわらなくなり、高速道の路肩で止まりました。

私は40年前のフェラーリを全開でとばせるようにしてお渡ししますが、後はオーナーの責任で管理していただくしかありません。運転しながら常に水温計や油温計、油圧計などを見ることは最低限必要でしょう。Gのマークのある警告灯にも注意が必要です。低回転でうっすらと点灯するようであればオルタネーターが十分に発電していない可能性があります。常に車の状態を確認しながら走らせることがドライバーには求められます。それによってトラブルは未然に防げたり、大きなトラブルになることをさけることができます。
ネットを検索すると308オーナーのトラブルの話がやまほどでてきます。しかしそれが原因で手放したという方は少ない。それ以上にオーナーになる悦びがあるからでしょう。

先週ドイツから譲り受けたGTBを高速にのって工場まで自走した。

レーシーなハンドリングや、F106 と呼ばれるV8エンジンの奏でる乾いたサウンドはいつ乗っても魅了される。458やマクラーレンも素晴らしいが、それとは異なる良さがあります。

しかも同じコンディションの車はありません。今回輸入したブルーにクリームの内装の308はどんなに捜してもすぐには出てこない。1年後、5年後になるか全く予想は不可能です。その意味でいいものに出会った時は迷わず買うことをお勧めします。これは私がイタリアに買い付けに行く時も同じ。