
フィオラバンテ氏の308と同じカラーリングのファイバーグラスがベルギーの個人オーナーから売りにだされた。

興味があり、オーナーとコンタクトをとった。

価格は現地で3055万円。もともとは英国のディーラーの広報用の車で走行は23000マイル。登録は1975年5月。

ナンバープレートはNPA900P。
以前見たような記憶があり、過去の写真を見ていたらなんと2009年7月に私が英国で実際に乗ってきた来た車そのものだった。下の写真は2009年7月に英国で撮影したもの。

当時はまだ今のように価格は高騰しておらず、担当者はテストドライブに行ってきたらと私にポンとキーを渡し、一人で英国のカントリーロードを走った想い出がある。

プロトタイプのような車で天井の内張りは一枚ものではなくスリットが入り、

フロントグリルはボディからとびだし、

バルクヘッド中央のストッパーの左のレザーがきちんと納まっていなかった。

リヤのトランクはテールライトのカバーもない状態で、エンジンは調子は良かったが、メーカーが試乗車としてディーラーにデリバリしたものとしてはお粗末すぎて、購入をやめたのだった。

あれから6年。4倍以上の価格になったが、高ければいいと判断するのは大きな間違いだろう。
それにしてもこの8年間で何十台もの308を見てきたが、実際に見ると、送られてきた写真だけではわからないことが多くある。写真だけで購入を決めてしまえるようなものも中にはあるかもしれないが、私の経験では1台もない。

先月末、ペルージャにある3オーナーのGTBを見に行ってきた。

2ndオーナーが70歳をこえたのを機に、息子に譲ったのだが、その方がニューヨークに弁護士になるために行くことになり手放すのだという。
小雨の降るペルージャのフェラーリディーラーのショールームにその車はあった。
パッと見はきれいな車だったが、気になる点がいくつかあった。

ガソリンキャップのカバーの三角形のルーバーが開けるたびにフレームにあたるほどガタがある。

助手席側の後ろのバルクヘッドのリアクオーターウインドウの中のレザーが縮んでか、きちんと納まっていないのか隙間ができている。

本来のりでしっかり付いているはずのシートベルトアンカーまわりのカーぺットがはがれている。

シートは塗られているのがひと目みてはっきりわかるほど、パテがどっさり傷をかくすためにぬられている。その質感はオリジナルとは異なる。

左右のドアのヒンジ手前につくドアを開けると点灯するドアライトスイッチの左がオリジナルでないものがつく。

この写真の白いノブがオリジナル。さらに左右ともそのパネルには傷がつく。

キーシリンダーのまわりにつく丸いリングも欠損している。

本来はこのようなリングが装着される。
メインテナンスは今年の1月にタイミングベルトを交換しており、きちんとされているが、

ガソリンキャップのカバーのガタが最後まで気になって3時間ほどまよったあげく、購入を断念した。上の部分が本来は平らなのに対し、でているのがわかりますか?このように一つ気になるところがあると、見れば見るほど、気になる点がでてきます。
おそらく経験上、このような車は日本に持ち帰ればさらに気になる点がでてくるのです。
以前のような価格であれば気軽に、購入していたものも、価格が高騰した今はなおさら購入に慎重になる。
その問題点が今までみたこともない今回のような場合は、まずよほど問題ないと確信がない限り躊躇してしまうのです。

私にとっては何十台もの中の1台だが、これから購入されようとする方にとっては自分だけの大切な1台となる車。40年近くも前に作られた車なのだからすべてがオリジナルであることは望まないが、譲れない点はいくつかある。その中で私がいいと思えるものだけを日本に持ち帰るポリシーは今も昔も変わらない。