自分だけの1台

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スポーツカーを買うにあたって何を選ぶか、これほど楽しい時間はない。
自分の予算を決め、その範囲で最も魅力的な1台を選ぶ。
学生時代に選んだ最初の車はFiat X1/9 。次はアルファロメオ2000スパイダー。就職して初めて買ったのはロータスエスプリ、その後フェラーリ308gt4を購入し、禁断の世界に入っていく。
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車の販売をするようになって、F40 やカウンタック、Dinoなどあらゆるスポーツカーに乗ってきた。
その後フェラーリチャレンジというレースを経験し、車をコントロールする楽しさを覚えた。
以前はそのスタイリングや音、コックピットの雰囲気で愛車を選んできたが、ハンドリングやバランスの良さなどが愛車選びの大きなポイントとなっていく。
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速くはしるという車の性能では458のような新しい車にはかなわないが、コントロールする楽しさでは70年代の308やgt4は引けをとらぬばかりか、モダンフェラーリをも凌ぐ。
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コーナーリング中にアクセルの開度でノーズをコントロールする醍醐味は308で楽しめる素晴らしい体験だ。
現代の458やマクラーレンではその限界が高すぎて、とても公道でそういった運転は出来ない。
リスクが高すぎてしまうからだ。
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パワーアシストの付かないステアリングからはダイレクトに路面をとらえるタイヤのグリップ感が伝わってくる。
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極太のレーシングタイプのステアリングでなく、細い革まきのハンドルで車をコントロールすることのエレガントさはこの車ならではだ。
しかもその遊びのないステアリングの感覚はスポーツカーそのものでレーシングカーにもつうじるほどソリッドなのだ。
キャブレターならではの独特なシャープな加速とそのサウンドも魅力に溢れている。
デイトナのようなどこまでも加速していく、シンフォニーのような音はしないが、アクセルに連動した弾けるようなサウンドは鳥肌がたつほど素晴らしい。開発に携わったニキラウダや308を所有していた ジルビルヌーブやレガツォーニも同じ気分だったに違いない。電子制御でコントロールされたモダンカーにはない世界だ。
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かつて私も所有していた246Dino のグニュと入る2速に比べ、スッと吸い込まれるようにカチッとはいるシフトも心地いい。
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308GTのコックピットは座るとダッシュボードからつながるドアのアームレストがハンドルを握った左肘を丁度よくささえてくれる。フェラーリ伝統のゲージの切られたアルミのカバーから垂直にのびたシフトレバーもドライバーの気分を高揚させる。
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数字の刻まれたシフトノブ、メッキのフレームからでたプラスティックのノブの付いたレバーなど、どれをとっても70年代のフェラーリならではの美しさに溢れている。
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Dino gt4 のドライバーを包み込むようなコックピットの作りは秀逸で、レバーのカチとした操作感も好ましい。ビニールレザーで覆われたダッシュボードの質感も現代のものとは一線をきす雰囲気で、いい意味でのレトロ感がある。
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ここ1年ほどの価格の急騰はこれから購入を検討されている方にとっては悩みの種ではあるが、その素晴らしさは今までなぜ評価されなかったのかが不思議なくらいだ。
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事実、gt4が600万円、308GTBが700万円というバーゲンプライスで販売できた5年前はこの価格でこれほど見て美しく、乗って楽しいスポーツカーはないと思いヨーロッパから輸入を始めたのだ。
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ヨーロッパを長年走り続けて来た車が日本に来て初めて自分のガレージに納まるという高揚感も手伝い、自分だけの1台を所有する悦びは格別なものとなる。
現在投資の対象となり、値上がりしたとはいえ、308はDino246 よりははるかにリーズナブルだ。
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今やイタリアでは37万ユーロ前後となった246はおそらくこれ以上の値上がりはないだろう。
もうその価格では売る人はいても買う人は非常に少ないと考えられる。
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たとえDino が308と同じ価格でも今の私なら間違いなく308を選ぶ。Dino は10年近く所有したということもあるのだろうが、スタイリングやハンドリングなど素晴らしい車には違いないが、エアコンのつかない車は日本では乗る時期が極端に限られた。
ロックしたままドアノブをひくとワイヤーが伸びてレバーが戻らなくなるなる等の小さなトラブルもある。軽いライトウエイトのようなエンジンも魅力ではあるが、トルクとパワーに勝る308のエンジンを一度味わってしまうと物足りなくなってしまうのだ。
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残念ながら246には308に搭載されるF106 ユニットのクリップをこえてアクセルを全開にした時の叫びたくなるような興奮はない。
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アクセルコントロールでノーズの向きを変え、コーナーを立ち上がる時の308のドライビングプレジャーは格別だ。
前述したように車の楽しさはスポーツカーとして車をコントロールする楽しさだけではない。運よく私はレースをすることができたおかげでその楽しさを知ったが、ほとんどの一般の方はそのスタイリングや音、雰囲気などで購入するのだろう。
しかしながらレース経験のない246を売却して308のファイバーボディをご購入していただいた方にどちらがいいですかとお聞きしたところ、今の308ですねと即答された。アクセルのふみ加減に即座に反応するエンジンに魅せられているという。あのひらひらとコーナーを抜けていく軽やかな Dino のハンドリングに優るほどそのエンジンは素晴らしいのだそうだ。まさに同感であきっぽい私がいまだに魅せられ続けている。
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クラシックフェラーリを検討されている方で本当にスポーツドライビングを愛する方には5000万円をだしてDino246 やDaytona を買うより、遥かにリーズナブルな308を選ぶことをお勧めする。
それぞれ素晴らしい車ですが、何を求めるかでどの車を選ぶかを決めるべきでしょう。
高ければいいとは限らないからです。今や1億円もするLusso は実に美しいGTですが、スポーツカーとしては私にはもの足りません。
何台も所有できるような幸運な方もいらっしゃるでしょうが、どれか1台とお考えの方にはそれぞれご自分で運転して、または同乗させていただいてから決めるのがベストでしょう。
これからいくら値上がりするかという胸算用で買うのは悲しすぎます。
人生は一度きりです。振り返れば楽しい時間はあっという間に過ぎていく。フェラーリを買ってほとんど乗ることなく10年後に1億の利益を手にする人生と、自分でステアリングを握り、ワインディングを思いっきり駆け抜けた思い出多きスポーツカー人生のどちらが幸福でしょう。後者のようなお客さんがいる限り、いいものだけをヨーロッパから紹介し続けていきたいと考えます。

  by cavallino-cars | 2014-12-10 20:25 | Comments(1)

Commented at 2014-12-10 22:53 x
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