作り手から見た美しさ

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昨日、車のデザインの仕事をされている方がご来店された。
私とは70年代の車には今のモダンカーにはない美しさがあるという共通の認識。
なかでも308GTBのフロントの造詣は秀逸だという。
その方とお話させていただき、何点か興味深いご意見をいただいたのでご紹介させていただきます。
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まずはフロントの左右のコーナーの造詣。
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一見328と同じように見えるが、308はボンネットの面から正面に折り込まれた位置からフロントタイヤに向かい、くっきりとラインがだされ、それがフェンダーに付いたウインカーの前で消えている。
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手で触ると明確に角がたっているのがわかる。
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328はご覧のようにそのラインはなく、丸くラウンドしているだけ。
当然製作コストは大幅に削減できる。
あれほど美しい328だが、308のシャープなラインと見比べてしまうと見劣りしてしまう。
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一見同じように見える2台だが、作り手からみるとこんなに違いがあるものなのだ。
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328がデビューしたころは308が古臭く思えたものだが、28年経過すると逆に308が新鮮に見えてしまう。時代を超えた美しさが308にはある。
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実際に手でこの部分を触ってみると見た目以上に角がたっているのがわかる。
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このラインをだすのは当時の職人ならではの仕事。プレスでは決してだせない美しいライン。
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さらにピニンファリーナは前から後ろまでのこの車の美しい流れるようなラインを強調するため、ドアノブをドアの上部に移動させた。
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328になってからはオープナーはコスト削減のためにドアに組み込まれる。
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88年以降の車はさらなる製作コストの削減のため写真のように黒の枠の中にノブがつけられ、それをドアにはめ込むようになる。本来の前から後ろまでつながった美しい曲線がこのオープナーにより、切断されてしまった感は否めない。
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コストダウンの至上命令のもとデザイナーの本来の形が少しずつ変えられていく。
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これは企業としては仕方がないこと。
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そういえばマラネロでフイオラバンティ氏とお話した時も同じことをおっしゃていたのを思い出した。
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308にはこんな細かい所にも作り手の美しさに対するこだわりが感じられる。

  by cavallino-cars | 2014-05-03 14:57 | Comments(3)

Commented by 埼玉のTT at 2014-05-02 22:05 x
私も308は、ここの造形がキモの一つだと思います。なので、年賀にお送りしたイラストの308には、しっかりとここにラインを入れました。308は、断面や面質には60'sの面影を残しつつ、サイドビューは70'sのウェッジシェイプでまとめていて、フィオラバンティ氏の卓越したセンスが伺えます。本当に美しいですね…
コストについては、私もデザインに携わる者として頭の痛い部分ではあります。ただ「アート」と「デザイン」ははっきりと分けて考え、制約の中で最大限の効果を引き出すのもデザイナーの手腕でありたいと思ってます。
Commented by cavallino-cars at 2014-05-03 14:50
コメント有難うございます。
今の車作りはコストの問題に加え、当時と比べ安全基準が厳しくなり、自由なデザインができなくなってしまったのが大きな足かせになってしまっているのでしょうね。
70年代はそういう意味でも古きよき時代だったと思います。
Commented by 白猫 at 2014-05-04 10:42 x
さらに付け加えるならば、サイドのエアインテークの
エッジも全く違います。
308はスチールボディでもハンダを盛り付けてエッジを
くっきりと出してますが、328はその工程を省略しているので
エッジのラインは308と比べるとダルいです。
ちなみに308のエアインテークにハンダを盛って削り出してる
のは当時の写真などで確認出来ます。
どちらかだけ見ると気付きにくいポイントですが
2台を並べて見れば明らかに違うのが判ります。

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