ペルージャからはAncona へ向かう。イタリア中央の右端の街だ。ペルージャからは右下に南下する。

目的は1982年製のアルファロメオスパイダー1600。
オーナーは以前、シルバーの308GTB を譲っていただいた方だ。

この美しいスパイダーはジュネーブショーで発表された時と同じ色。
シャーシ番号AR11535★0004807★のこの固体は1982年5月7日にMr. Verdenelli Roberta 氏に新車で登録される。その1年後、Mr. Montesi Fausto氏に売却される。そして今年になって彼らのガレージに移り住んだ3オーナーカーだ。

30年もの間、雨の日はもちろん、夏の暑い日ざしの下にもさらされることなく過ごしてきたこのバルケッタはインテリアはもちろん、カーペットや幌までオリジナルで、しかもその状態は素晴らしいコンディションなのだ。

ほとんどのスパイダーはボディはもちろん、下回りにも錆が見られるが、この車にはまったくといっていいほどその痕跡がない。
彼のガレージに来てからは、ブレーキパッド、エンジンオイル、オイルフィルター、ギヤオイル、フュエルポンプを交換。さらにショックとタイヤは新しいものが組み込まれた。マフラーのカッター部分はオリジナルだが、マニフォールドからカッター部分までは新しいものに交換された。

ショックを交換したことは運転してみるとすぐにわかった。少し上りのコーナーをテールをスライドさせながらクリアしていくその安定性のよさは60年代のデビュー当時のデュエットとは比較にならないほどだ。それにしても今見てもウッドステアリングとこのコックピットのかっこよさは抜群で、当時これに憧れて購入したスパイダーとの蜜月の日々を思い出す。

アルファ伝統の4気筒ツインカムの1600ccのエンジンは非力かと思いきや、そのピックアップの良さは、充分トルクフルでスポーツカーならではの気持ちよさがある。それにあのキャブレター独特のアルファサウンドが加わるのだからたまらない。

幌をたたんだ時に使用するトノカバーも残っている。
1600ccのスパイダーの生産台数は72年から10年間でわずか4800台。そのうちのインジェクションになる前の最終モデルは500台ほどに違いない。
そのうち何台がこのようなコンディションで生存しているのだろう。

フロントのフェースはアルファロメオの伝統の盾がなければDino246 にも通じるエレガントさだ。

ホィールキャップもオリジナルが装着される。

幌の内側につくキャッチ部分をとめるストラップも左右そろい、

センターにつくオープナーも新車時のままだ。

当時はソフトトップは布製ではなく、このビニールの生地がオリジナルらしい。幌の後ろのウインドウ部分も傷のほとんどない素晴らしいコンディションなのには驚かずにはいられない。

リヤシートはつかず、2シーターモデルのなるこの固体はリヤにはバッグやコートをおくのに便利な棚がつく。
もちろんそこにはられるカーペットもオリジナルだ。

マフラーのエンドパイプが下を向くのがオリジナル。個人的にはボートテールのものよりもリヤを直線的にばっさり切ったコーダトロンカのヒップラインの方が好きだ。

初期型のクラシカルなメーターパネルにくらべ、トップの張り出たこのコックピットの方がよりアルファらしく個人的には美しく思える。おそらく初めて所有した2000スパイダーベローチェの美しいコックピットが頭から離れないのかもしれない。
ワインディングを走り、3つ目のコーナーを抜ける時には譲ってもらうことを決めていた。
冬の東京をオープンでドライブすることを想像するだけでわくわくする。
VIVA Alfa!