
キャブレターの308gt4やGTB、GTSに乗るたびに38年前に作られたことが信じられないその性能に驚かされる。

スイッチ類の操作感、内外装の美しさにはモダンフェラーリとは比べられないほど、イタリアの文化を感じる。イタリア人にしか出来ないデザインや細かい内装のこだわりは世界最高のスポーツカーと呼ぶに相応しい。

今のフェラーリは最新のF1の技術を感じても残念ながらイタリアの文化の香りはしない。

25年前初めてFerrari を購入し、高速を走った時に、室内の革の臭い、3000回転で後ろから聞こえてくるジェット機のようなキーンというエンジン音、ウインカーやポップアップライトの操作感、薄暗く照らされるコックピットの明かり、スロットルのわずかな動きにもリニアに反応するエンジンなど、すべてが他の車とは一線をきす、フェラーリならではの世界に圧倒されたのを憶えている。
自宅のガレージで初めて洗車した時のそのボディラインの美しさ。
ポルシェのドアとは比べられないほど優美なラインをもつことが自分で撫でるとよくわかる。
まさにイタリアの工芸品というに相応しいものだった。

時代の流れなので仕方ないが、348からはフェラーリも手作業の生産ラインから機械が導入された。オートメーション化が進み、今では当時の何倍もの台数が1年間にマラネロから世界各国にデリバリーされるようになった。

残念ながらそれらの車からはイタリアの歴史や文化は感じられない。

30年後に458や430にも今、私が308に抱いているような感情がもてるのだろうか?数年たつとベタベタになるドアノブやエアコンのダクトからはイタリア人の物作りへのこだわりはまったく感じられなくなってしまった。

手作りの車ならではのもつ質感や美しさは機械で作られたものにはない時代を超えた美しさがある。
それがクラシックの魅力だろう。

クラシックフェラーリの12気筒のサウンドは言葉にならないほど官能的で魅力だが、デイトナや275は、日本で運転するには相当な腕力を有する。しかもブレーキはスポーツカーと呼ぶにはあまりにプアだ。
気軽に乗るという車ではない。

乗って楽しく、見て麗しいベストフェラーリはキャブレターの308シリーズだ。

人生は1度だけ。あっという間にその時は過ぎていく。

ガレージにカバーをかけて、年に数回ドライブする車より、青空の下、気軽に乗れるイタリアの文化遺産といえる308がベスト。

328や348、355などは言うに及ばず、512BBや4000万クラスのディトナや1億もするルッソなどより、遥かに楽しい。

一度でもいいから調子のよいキャブの欧州仕様の308に乗れば、そのよさは理解できるはず。
しかもエアコンも装備されているのでやせ我慢してのることもない。

私のガレージにおきたい車は現代のセダンが1台、308が1台、それに年に2回ほど走らせる1970年代のF1が理想だ。上の写真は1971年、312B。

308に乗るたびにイタリアの乾いた空気と美しい街が見えてくる。
この車にはイタリアの素晴らしさがつまっている。