古い車との付き合い方

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308を所有する喜びは自分だけの1台となる貴重性と、30年以上前の車をモダンカーのように運転した時のそのポテンシャルの高さだろう。今まで輸入したすべての車は私が試乗し、首都高でロードテスト後、納めている。

納車時には問題がなくとも、現代の車でもトラブルがあるように、クラシックな308ではモダンカー以上にトラブルが発生することは覚悟しなければならない。

今から30年以上前になるが、中古のロータスエスプリを購入したその週にミッションオイルが入ってなく、ミッションが焼きつくトラブルがあった。車検をとってからの納車だったので販売店にクレームで修理してもらうよう交渉したが、結果は折半ということに。

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こんなトラブルのないようにと納車前には必ず1年点検を実施している。
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それでもウォーターポンプが壊れたり、オルタネーターが故障したりするトラブルは発生する。

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今年も1月に246を乗っていて、突然ラジオの電源が落ち、ヘッドライトが暗くなり、オルタネーターが壊れたことがあった。
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納車して2週間ほどたってウォーターポンプが壊れ、ベルトが切れて止まってしまったgt4もある。
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このgt4は英国のフェラーリスペシャルショップでフル整備をしてもらい、さらに入国後1年点検をしたものだった。

トラブルはいつも突然やってくる。
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ベルトが切れれば、ダッシュボードのGマークが点灯し、水温が上がり始める。電動ファンが回らなくなっても水温は上昇する。
オイルが漏れて、急激に流出すればアクセルを踏んで、エンジン回転を上げても油圧は上がらなくなる。
それに気がつかずに運転し続ければ大きな出費を覚悟せざるを得ない。

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メーターパネルの水温計、油温計、油圧計はそういったトラブルが発生した時に、いち早くドライバーにその異常を知らせるためにある。

それらを常に確認することはスポーツカーを乗るドライバーには欠かせないことだろう。
それ以外にも、臭いや音なども重要で、いつもと違ったものを感じた際には一度,車から降りて確認するくらいのことは必要。

友人の元F1ドライバーのエリックコマス氏は私のロータスで一緒にミレミリアに出場した時、タイヤの空気圧が0.3kg減っただけでもそれを指摘したほどすべての神経を集中させて車の状況を把握する。

彼ほどは無理としても、各メーターの確認はクラシックカーに限らず、自動車を乗るための最低条件でしょう。
私も高速道路上で止まったことや、F40で表参道の交差点で立ち往生したこともあります。
ギヤを2速にいれて、セルだけで車をはじによせたこともある。

もちろんトラブルは少ないにこしたことはない。水が滲んだ後のあるウォーターポンプはオーバーホールし、傷んだホースは納車前の点検では交換している。オイル関係などの点検も必ずしています。

それでも機械ですから壊れる時はあります。
348チャレンジに参戦している時も練習走行のため、筑波サーキットや富士スピードウェイを何人かで貸しきったことがありました。前日まで快調だったエンジンのセンサーが突然壊れ、時間と費用を無駄にしたことも何度もありました。去年イタリアで借りた走行が1万キロにも満たないレンタカーが高速道路で止まるというトラブルもありました。

クルマは壊れても不思議ではないものという認識を私はもっています。
ましてや30年以上前の車なので何があっても不思議ではありません。

私が海外から購入する時にオリジナルにこだわったり、過去の整備状況を調べるのは出来るだけそういったトラブルのない車、日本に輸入してからも、整備に極端に費用のかからないものを選びたいからです。

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シートベルトがオリジナルから別のものに交換されていたり、フロアマットやトランクのマットが純正以外のものに替えられているものは過去に何があったかがわかりません。
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ベルトが切れるほどの事故にあったのか、フロアマットは変えざるを得ないほど傷んでいたのか、想像するときりがないので、そういったものは輸入しないことにしています。

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もうひとつ注意しているのは錆び。
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ドアの下が腐っているものは購入は控えます。普段一般の方はまず見ないところです。写真のような状況のものは塗装を剝くと、鉄板がない状態のものもあります。
こうなるとドアを新しくするか錆びた部分をすべて切り取り、新たなパネルを溶接して塗りなおすしかありません。ドアパネルにできた空気の気泡のようなものも錆びの進行具合を示すバロメーターです。

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上の写真の車も外観はこんなにきれいに見えるのです。
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酷くなってきたら、その部分の補修をしなければなりません。
購入時にはきれいであっても、これだけはいつ出てくるかわかりません。錆びの進行はガレージの湿度や保管状況、前回の補修の仕方によっても大きく左右されます。

錆びの進行状態は塗装を剥がしてみなければわかりませんが上の写真のようなものはどんなにエンジンが調子よくてもそれなりの補修費を覚悟しなければ購入には踏み切れません。しかしながら塗装の問題はいずれは発生するものです。写真のように極端に腐蝕しているものは別ですが、内装や駆動系やエンジン、ミッションなどの状態を重視しています。

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古い車と生活をするということはそれなりの苦労もありますが、それを凌ぐ喜びやそのものでしか味わえないものがあります。ヨーロッパに何度も行って感じることは彼らには古いもの、美しいものを愛する気持ちが非常に強いということです。

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古くても美しいものを大切にし、ともに暮らしていく生活。彼らの自宅やライフスタイルに触れるたびに感じることです。
少なくとも私の出会った方からは今購入しないと3年後、5年後、値上がりしてしまうとか、損をしないから買ったという投機的なものはまったく感じません。感じるのは美しいものを愛する気持ちです。

この美しい車がガレージにある生活は まさにDolce Vita(甘い生活)の始まりです。
万一、トラブルがおきても、古い車なので仕方ないと割り切れる、心に余裕のある方だけの楽しみかもしれません。

  by cavallino-cars | 2013-02-19 13:57 | Comments(0)

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