私が308に魅了される理由はそのハンドリングやエンジンパフォーマンス等のスポーツ性とその美しさにある。オリジナルのもつ美しいデザインに、フェラーリならではの独特なサウンド、ステアリングやシフトノブの感触、当時のフェラーリだけがもつ独特な世界にコックピットに坐るたびに心が躍る。
ギヤチェンジの際にレバーがシフトゲートにあたるカチンという音やキーンというジェット機のようなサウンド、細いステアリングなど、今のモダンフェラーリでは決して味わえないものがある。
30年以上前に製造された数多くの308のうち、何台がオリジナルのコンディションを保って、現存しているのだろう。
大切にされてきた308はその車だけがもつオーラを放っている。内外装の色は違えど、いいものと出会えた時の感動は言葉にならないほどだ。

そんな期待をしながらFirenze を目指す。

途中、イタリアで初めて虹を見た。
2月3日、日曜の午後、フィレンツエ郊外のPrato という街の個人オーナーを訪ねるとガレージには15人もの大家族がその308gt4を囲んで私を待っていた。

その車を見た時、もう購入することを決めていた。同じものとは2度と出会えない。よいものと出会えた時は迷いはない。
丁寧に説明をしてくださったのは80歳近い、紳士。

2年前にキャブレターとウォーターリザーブタンクを新品にし、ベルト類も交換済みだという。この76年式のgt4はツインデスビの初期型のもの。エンジンルームとリアシートの間にあるアルミの断熱シートはオーナーが特別に作らせてオリジナル。こんなところからもこの車への想いが伝わってくる。

ガレージからの試乗は至福の時間だった。どこかしら不具合がある車がほとんどだが、このgt4は日本に持ってきて工場で整備を終えたばかりのコンディションなのだ。

アクセルペダルの踏み加減にあわせた間髪ないエンジンレスポンスやソリッドなステアリング、しなやかな足回り、気持ちよく吸い込まれるように入るシフト。

マフラーはアンサのオリジナルがつく。ガレージに戻るとオーナーが笑顔で待っていてくれた。

フロントウインドウには新車時に貼られたタイヤ空気圧を表示するステッカーも貼られている。

クロームメッキには傷もなくウエザーストリップの状態もきわめていい。乾燥したイタリアならではのコンディションだ。

さらに嬉しいことにマニュアル類もすべて揃っている。

リヤのトランクスペースのカーペットも写真のような美しい状態。
久しぶりに出会えた素晴らしいgt4だった。
今回の出張はこの車を譲ってもらえただけで価値があるものになった。
熱く語るオーナーは本当にgt4が大好きなのだ。
イタリアは素晴らしい。