
ミラノから車で1時間半のFiat dealer の社長の所有する1オーナーの77y308GTBが今回の出張でもっとも期待していた車だった。走行はわずか11700kmという固体。

外装はシルバー、中は黒革のこの車はモデナから直接もってきたという話で保証書にはオーナーの名前と住所が記載されるはずだが、下の写真のようにブランクのまま。右下に本来あるディーラーのサインもない。フィオラバンテ氏の車でさえ販売ディーラーのスタンプはなかったが、日にちとピニンファリーナの住所が記載されていた。今でもFIATの大きなディラーを所有するオーナーはフェラーリディーラーを通さずに直接マラネロから買ったのだという。

本来ならファーストオーナーの名前が記載されコピーがマラネロに1枚、販売店に1枚保管され、1年間のメーカー補償が受けられる。
車のカバーを外す時はいつもドキドキする。

車を天窓の下まで移動させて見るうちにシングルパイプのマフラーがオリジナルでないことにきずく。

フロントボンネットを開けると本来あるはずのカバーはなく、どこにあるかもわからないという。
シートも1万キロにしては傷みがはげしい。この10年間ほどはまったくメンテナンスをしていないというこの車はおそらく最低でも80万円ほどはかかるはずだ。
実はひと目見た時からテンションは下がっていた。あとは細かい不備がどんどん見つかり、購入をしない決断をする決意を決定的にするといういつものパターン。

一応フェラーリクラシケからこの車は77年にデリバリーされたという証明書のコピーはある。

メーターはファイバーグラスと同じ細い数字のトリップメーターがつく。
塗装はオリジナルではなく、いくつかのへこみと傷がある。

バックパネルの跳ね馬は首の部分が反り返り、

GTBは右が下がっている。

右フロントステップとフロントフェンダー部分の段差も気になります。

タイヤは新車時のままとのこと。76年製造のものがつく。

試乗もすすめられたが、10年以上もベルトを替えてないと聞かされ、万一のことがあると怖いのでお断りさせていただいた。
買う気がないのに運転することは私の場合ほとんどない。
大切にされてきた車とそうでない車のコンディションの差は歴然で36年間でこうも異なるのかと感じざるをえない。

新車時にフロントウインドウに貼られる空気圧を示すステッカーはあるし、メーターもきちんと動くのでおそらくは実走行なのかもしれない。しかし疑いたくなるところがあまりに多すぎる。
1オーナーの車でも愛情が感じられない車には決して魅せられない。

気がついたら車全体の写真を一枚も撮っていなかった。