testarossa
遅い車だと気を遣うランプウェイからの合流も、テスタロッサではまったくイージーである。
首都高速の流れなど、その気になれば1速の守備範囲なのだ。
その流れの中を3速と4速を適当に使い分けて泳ぎぬけるが、圧倒的なのは3速の加速である。
踏み込むと同時に、まるで周囲の車が止まってしまったかのごとき力みなぎる加速が開始され、もしもそのままレブリミットの6800rpm まで引っ張れる状況にあれば、スピードは軽く170km/h に達するのだ。

これは1986年カーグラフィック4月号の記事の抜粋だ。
テスタロッサのステアリングを初めて握るまではこの記事を胸躍らせて何度も読んだ。

T型フォードから乗り比べれば上の記事のような感想はもつかもしれない。
エンジンは12気筒独特なスムーズさはあるものの、ディトナのような鋭さはまったくなく、ブレーキも箱根ターンパイクを1往復しただけでフェードし、ペダルが床から戻ってこないほど稚拙なものだった。固体差があるのかと思い、5台ほど乗ってみたが結果はすべて同じだった。
当時ブレーキのプアなことを指摘するジャーナリストは誰ひとりいなかった。
当時はあの洗練されたデザインに憧れた。
今見てもはっとするほどの美しさがある。
GTとしてはあの美しいスタイリングとあいまって素晴らしい車だが、残念ながらスポーツカーではない。当時の記事を見ていると絶賛しているものばかりだが、どれも真実とはかけはなれたものが多い。
フェラーリ批判はタブーのようなものがあったのかもしれない。
直線の多い、東名か、東北道沿いに別荘でも所有し、その往復に使うには最適な1台なのだろう。
もともとテールスライドなどさせて走らせるようには設計されていないのだ。
優雅に12気筒のスムーズな息の長い加速感と独特の雰囲気を楽しむ車なのだ。



こんな運転ができるのは断然308だ。一度この楽しさを味わってしまうとますます30年以上も前に作られたこの美しい車が手放せなくなってしまう。

先日gt4のオーナーの方からキャブのフェラーリはその時代に連れて行ってくれる。
しかも車と対話ができることが素晴らしいことなのですというメールをいただいた。
308は機械としての車と会話が楽しめる数少ない1台だ。
by cavallino-cars | 2012-04-05 17:16 | Comments(0)