11月18日の金曜、午前11時発のBA006便に乗り、英国経由でデンマークに入った。

目的はブルーメタリックの308gt4。
デンマークに着いたのは同日の午後の9時半。
翌日の土曜の朝の9時に約束どうり宿泊先のホテルのロビーに先方が迎えに来てくれた。
東京より気温は7度ほど低く、吐く息は白い。

空港から30分ほど車を走らせたガレージにgt4は待っていた。
さっそくエンジンをかけ外で暖気をする。
1stオーナーはフェラーリクラブDenmark の会長で今はF50 などを所有。その方が28年間所有していた。2ndオーナーはドクターだ。4年間の走行距離はわずか1400km。

オドメーターは66,397kmを刻む。
雨の日は一度も乗っていないというだけのことはあり、ドアの下やフェンダー下にみられる錆びの進行を示す気泡もみられない。
オリジナルペイントとのことだが、これは日本に来てナンバープレートの穴の補修のために剥いてみるまでわからないだろう。
しかしうっすらと艶のひけた感じはもしかしたらオリジナルのラッカーペイントかもしれない。
オリジナルのラッカー塗装は磨けば信じられないほどの艶がでる。

ホイールも後期の星型と初期モデルのホイールキャップのつくタイプの間のもの。

クロモドラ製で状態はすこぶるよい。何回も塗ったものはCROMODORAの文字がこれほどくっきりは出ないのだ。

マフラーはgt4のためにだけ作られた太鼓が斜めにカットされたオリジナルがつく。

フロントウインドウには新車時につけられたタイヤプレッシャーを表示したステッカーも貼られている。

室内灯も後期の丸くなったタイプとは異なり、シリーズ1 のDinoタイプのフラットのもの。

内装もすべてオリジナルだ。ドアの内張りの前方下につくビニールは新車の時からつく。足でドアを蹴りこんだ時に傷がつくのを防ぐためにもの。英国から初めて輸入したgt4にもついていた。

リヤのトランクの内張りはこのうような麻のようなタイプがオリジナル。オリジナルでないものがつく車はどんなにきれいでも買わないのが弊社のポリシー。

ベルトーネのエンブレムもdisegno の文字が若干大きいオリジナルのものがつく。リプロダクションのものはオリジナルと比べると少しだけ文字が細い。塗装をやり直した車にはこのエンブレムがなかったり、リプロダクションのものが付けられているものが多い。これももしかしたらオリジナルペイントかと思わせる理由のひとつだ。
暖気を充分行った後、曇り空のコペンハーゲン市外をドライブする。
シフトはアップもダウンも問題なく気持ちよく入る。
エンジンもトップエンドまで淀みなく回る。エキゾーストノートが寒い空気を切り裂くようで心地いい。
30分ほどのドライブは仕事とはいえ、実に楽しい時間だった。
但しそれは調子のいい、美しい車に限られる。
ぐずついたキャブのエンジンほどストレスフルな車はないのだ。

F106Aのコードネームで呼ばれるこのV8エンジンはフェラーリサウンドと呼ぶにふさわしい音楽を奏でてくれる。それにこの独特のインテリヤと美しいボディが加わるのだからたまらない。当時はレザーシートはオプションだったが、ブルーのモケットとアイボリーのビニールレザーのコンビの内装はボディカラーにマッチして実にエレガントだ。

年明けにはこのフェラーリも日本にやってくる。
このデンマーク育ちの箱入り娘は入念な整備とクリーニングをすれば、見違えるように美しくなるだろう。今からその日が楽しみだ。