Dino208gt4

70年代の2リッターフェラーリは3リッターフェラーリに手が届かない人のための廉価版のものというイメージがつよい。
私も乗ってみるまではすくなからずそういった印象をもっていた。
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それを根底からくつがえしたのがGTBターボだ。
328とはまったく異なるターボの加速を一度でも体験したならけっしてプアマンズフェラーリなどという言葉はでてこない。
むしろ40を彷彿とさせる強烈な加速とあの甘美な排気音は328よりも刺激的でもある。

その意味でDino208gt4 はどうか。
GTBターボのように308を上回るような加速はしないが、当時の2リッタークラスのスポーツカーと比べると圧倒的にレスポンスのいいエンジンとクイックなステアリング、ボディ剛性の高さ、どれをとってもフェラーリの名に恥じない。
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308に比べトルク感はさすがにないが、軽くトップエンドまでいっきに回るエンジンはかつての6気筒エンジンを搭載したDino246 を彷彿とさせる。

その回転の上がりの速さはフェラーリがライトウェイトスポーツを作ったならまさにこうなるだろうと思うほどタコメーターの針は注意しないといっきにレッドゾーンに飛び込むほどだ。
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3リッターに比べ、208gt4はギヤ比を下げることにより、加速力を上げたり、一回り細いタイヤを装着することにより最高速を高めるなど細かいところにも当時のエンジニアの英知がちりばめられている。

残念ながら形がよりスポーティな同時期の208GTBにはそういったメカニカルな配慮はされていないようで208gt4よりも明らかに重く、遅く、スポーツカー的な印象はまったくない。

一度でもキャブレターのフェラーリを運転した事のある方はあのキーンという独特なサウンドに魅せられたにちがいない。
このgt4にもフェラーリミュージックは健在で、3000回転くらいでクルージングしている時でもコックピットはあの甘美なサウンドで満たされる。

当時のアルファロメオと比べ、圧倒的にすぐれているのはハンドリングとバランスだ。FRとミッドシップとの差は歴然で、アクセルコントロールでノーズの向きが変わるのは少しでもスポーツドライビングに造詣のある方ならすぐにわかるはず。
コーナリング中に右足のアクセルの微妙な踏み加減でコントロールする醍醐味はスポーツカーならではの楽しみだ。

ラックアンドピニオンのステアリングもレーシングカーに比べれば、若干ダルなところもあるが、それはレーシングカーと比べればという話でキックバックもなく、乗りやすい。
といっても他の当時のスポーツカーと比較すると十分クイックでスポーツカーそのもの。

MOMOの革まきの細いステアリングから路面状況やタイヤと路面の接地具合がその言葉どうり手にとるようにわかる。
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今回再び弊社にもどってきたこの208gt4は1976年3月18日にローマのディーラーでデリバリされた1台。

39年間を一人のオーナーの元で過ごし、2015年日本に弊社が輸入した車だ。

走行距離は53500km。輸入時の2年前にタイミングベルト交換を含むフル整備を実施済み。
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イタリアで黒く塗られていたフロントのラジエターグリルとフロントフードとエンジンフードのアルミ製のルーバーは
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日本にきてから弊社でオリジナルのシルバーにもどし、
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フロントスポイラーの下の黒く塗られていた部分も
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写真のようにオリジナルに戻した。
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マフラーもシングルパイプの新車時から装備されていたもの。
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内装は2年前にモデナで初めて見た時、擦り傷さえない素晴らしいコンディション驚いたほどで、今もその状態は変わらない。
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当時のマニュアルやマニュアルケースはファーストオーナーが新車で受け取ったものがそのまま残り、
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キーはエンジンキーもドアキーも当時のオリジナルが2セット揃う。
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さらに東京で正規ディーラーをとうし、フェラーリクラシケも取得済みだ。

日本はもちろん、本国イタリアでもこれほど美しいDino208gt4 に出会えることは非常にめずらしく、今ここに帰ってきたことをうれしく思う。

初期モデルのためフェラーリのエンブレムがいっさいつかないのもいい。
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唯一の例外はCROMODORA製のリアのホィールでDinoの刻印とFERRARI の刻印がつく。
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ちなみにフロントはDinoのみ。FERRARIの刻印はない。

当時オプションだったエアコンが装備されるのも高温多湿な日本では実にありがたい。

現在ショールームに展示中。自分だけの1台をお探しの方にはこれほどふさわしい1台はないだろう。

オリジナルのだけのもつ美しさがこの車にはある。





  by cavallino-cars | 2017-06-13 15:06 | Comments(0)

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