ブレシアからおおよそ2時間ベネチアといっても水の都ではなく、少し北のアルティノという小さな街に向かう。
目的は75年の2オーナーの赤の208gt4。オーナーが82歳という高齢のために手放したものだ。
初期型ならではのホィールキャップのつくタイプで中央にはDino のエンブレムが付く。跳ね馬に交換されているものが多い中、Dino エンブレムがつくものは珍しく、
リヤのトランクフードや
フロントにもフェラーリのロゴはいっさい付かないオリジナルの状態なのもいい。もちろんステアリングセンターのホーンボタンもDinoのものがつく。
ドアの下には左右とも腐食の様子はいっさいなく、雨の少ないイタリアならではのコンディションだ。おそらく雨の日には乗っていなかったのだろう。
内装は当時の型押しのビニールタイプ。写真では伝わりにくいが革よりもこちらの方がしっくりくるのだ。
廉価版のDino に用いられた当時のオリジナルだ。246Dino もオリジナルはレザーではなく、ビニール製だったが、現存するほとんどの固体は革にはりかえられており、今ではオリジナルのビニールレザーの方が貴重で価格も高い。将来gt4もこのオリジナルのマテリアルのもので、Dino のみのエンブレムが装着されるものの方が貴重で価値が上がるだろう。というより、自分だけの1台としては特別な1台となる。
1975年の10月29日にイタリアのフィレンツェのディーラーからデリバリされたこの2オーナーのgt4が3人目のオーナーとして自分のガレージに納まることを想像しただけでもワクワクする。
ドアのインナーハンドルもオリジナルで付け根にはプラスティックのリングがつく。写真の左上に見える四角いドアのインナーライトも初期型のみに装着されたものがつく。
シートベルトは巻き込み式ではない当時のものがそのまま装着され、
リアのアンカー部分のプラスティックのカバーも揃う。
助手席前のダッシュボード内のフューズボードにも当時のオリジナルのカバーが付くのも嬉しい。こんな細かいパーツがあるのもこの車の魅力なのだ。
マフラーはDino208gt4 のオリジナルのシングルパイプがつく。遮熱板の網も当時のオリジナルなのもいい。ボディに多少のへこみや傷もあるが、これは新車のようにすることも可能でまったく問題ない。
ウインカーコラムユニットもシャフトがシルバーのオリジナル。メーターは時計だけが作動していなかったが、これはオーバーホールすれば問題なく動くだろう。
細かいことだが、リヤのエンジンフードとトランクのオープナーの枠が割れている固体が多いなか、写真のように完璧な状態なのもいい。ちなみにこのパーツも欠品中。
パウロさんとカタコトのイタリア語で試乗にでかける。
1速、2速、3速、4速、5速とミッションの異常がないか、クラッチの調子もみながら、4速、3速、2速とダウンシフトをして問題ないことを確認しながら少しだけハイスピードでとばし、ステアリングの応答性とショックの具合をチェックしたら、助手席のパウロさんが少々怖かったようで、アテント!と言われてしまった。
距離計も作動していることを確認し、ガレージに戻り、もう一度細かいところを見る。
トランクはオリジナルのカーペットが張られ、フロントのスペアタイヤもオリジナルがのり、ジャッキの入った工具も揃う。
もちろんサイドマーカーもオリジナルだ。
今まで208は何台も輸入したが、赤は不思議とよい固体とめぐり合ったことがなかった。
今回初めて購入することに決めた。
価格は多少高くてもやはりいいものを持ち帰りたい。よいものは本当に少なくなってきている。
多少の外装の補修は必要だが、この車は間違いなく、見違えるほど美しくなるのがわかる。
また素晴らしい1台を日本に持ち帰れることがうれしい。